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採用計画の見直し時は?見直すべき時と改善に役立つ8つのステップを紹介

採用計画の見直し時は?見直すべき時と改善に役立つ8つのステップを紹介

採用は計画を立てても、その通りに進まないことが多いもの。

応募数が読めない、歩留まりが安定しない、採用単価は高騰する、現場との認識も合わない。──こうした悩みは、多くの採用担当者が日々直面している現実です。

本記事では、採用活動全体を構造化し、どこに課題が潜んでいるのかを明確にしながら、採用計画を改善・最適化するための実践的なフレームと具体策を整理していきます。

多くの課題は施策の問題ではなく「採用計画の設計と運用」に原因があるため、ここを整えるだけで成果は大きく変わるでしょう。

採用計画とは?

採用計画とは、単に「何名採用するか」をまとめた採用人数表でも、「いつ面接をするか・いつ求人を出すか」を示すスケジュール表でもありません。

企業が掲げる経営戦略・事業計画・組織戦略と整合させながら、「どの部署に、どのような人材を、いつまでに、何人配置すべきか」を構造的に整理した、人材投資のための戦略設計図です。

採用計画に含まれる主な要素は、以下の通り。

採用計画を構成する主な要素

  • 採用人数と採用タイミング(人員計画):事業計画や期中の体制変更に基づき、必要な人員をいつ・どれだけ確保するかを明確にします。
  • 求める人物像(ジョブ要件・コンピテンシー・志向性):必要なスキル・経験にとどまらず、役割遂行に必要な行動特性やカルチャーフィットまで定義します。
  • 採用チャネルと活用方針:求人広告、エージェント、ダイレクトリクルーティング、リファラル、自社サイトなど、チャネルごとの役割・期待応募数・費用対効果を整理します。
  • 予算と採用単価の見立て:採用活動に投下できる予算を明確にし、チャネル別の想定CPA(Cost Per Applicant)、CPO(Cost Per Offer)を踏まえて最適配分を検討します。
  • 選考フロー・評価基準・関与メンバー:書類選考から最終面接までのステップや評価基準、現場メンバーの役割を定義し、プロセスの再現性を担保します。

これらを整理しておくことで、経営層・人事・現場が同じ前提を共有しやすくなり、「なぜ採用するのか」「どんな人材を求めているのか」といった判断基準が統一されます。

結果として、採用活動のブレや面接官ごとの判断のばらつきを大幅に抑制可能。

さらに、採用計画はKPI設定とモニタリングを可能にします。

応募数、書類通過率、面接通過率、内定率、辞退率、採用単価、定着率といった指標を計画値と実績値で比較することで、どの工程に課題があるかを早期に把握できます。

これにより、改善施策の優先順位付けも明確に。

このように採用計画は、経営戦略と組織戦略をつなぐ重要な指針

事業フェーズや市場環境の変化に応じて定期的に見直すことで、採用活動を経営視点で最適化し、継続的に成果を生み出す体制づくりにつながります。

採用計画を見直すべき5つのサイン

採用計画を見直すべき5つのサイン

採用計画は、一度作ったらそのまま運用する静的なものではなく、採用市場の変化、事業の方向転換、進捗状況などに応じて、随時見直しながら調整していく必要があります。

特に、以下のサインが見え始めた場合は、採用プロセスのどこかにボトルネックが発生しているサインであり、計画の前提条件を見直す重要な契機になります。

ここから、それぞれのサインについて、具体的にどこを確認すべきかを解説。

採用進捗が計画より遅れている

進捗遅延の際は、まず「どの工程で滞留しているのか」を明確にすることが重要。

採用プロセス全体を可視化し、工程別のリードタイム(応募から次の工程に進むまでの日数)を計測することで、遅延の要因を特定できます。

一般的には、以下の工程ごとに日数を算出。

採用日程の算出方法

  • 応募受付 → 書類選考
  • 書類選考 → 面接設定
  • 面接設定 → 面接実施
  • 面接実施 → 最終決定(評価会議・合議含む)
  • 最終決定 → 条件提示
  • 条件提示 → 内定承諾

特定の工程だけ著しく日数が長い場合、その工程にプロセス上の問題があるといえます。

工程が滞留する典型的な例

  • 面接官の日程調整に時間がかかり、面接設定が遅延している:現場が多忙で調整が後回しになると、候補者の離脱リスクも高まります。
  • 最終決裁者の承認フローが複雑で、内定提示までに時間がかかる:承認者が多い、判断基準が曖昧、会議体の頻度が低いといった構造が原因です。
  • 書類選考の基準が不明確で、各担当者の判断がまちまち:結果としてスクリーニングに時間がかかり、歩留まりの予測も困難になります。

このような滞留が確認できた場合は、選考ステップの整理・短縮、評価基準の明確化、意思決定フローのシンプル化といったプロセス改善が有効です。

また運用面では、担当者が全てを抱え込むのではなく、現場・経営層と定期的に進捗を共有し、優先度の高いポジションにリソースを集中できる体制をつくることが重要。

さらに、入社希望時期から逆算して採用計画を組み立て直すことで「毎年同じスケジュールで採用する」のではなく「事業に必要なタイミングで採用を完了させる」計画的な運用が可能になります。

応募数・歩留まり率が低下している

応募数が伸びない、あるいは書類通過率や面接通過率が以前より下がっている場合は、採用チャネルと訴求内容の両面で見直しが必要です。

まず、チャネル別や職種別に応募数と通過率を可視化し、どこからどれくらいの応募があるか、確認。そして、それぞれの入口から、どの程度選考を通過しているのかを確認します。

次に、不足している原因を下記例のように確認してください。

不足している原因の一例

  • そもそも露出が足りていない(掲載期間が短い、表示順位が低いなど)
  • 求人タイトルや仕事内容の説明で、自社の魅力が伝わっていない
  • 必要条件のハードルが高すぎて、母集団が狭くなっている
  • 候補者体験が悪く、途中辞退が増えている

改善にあたっては、求人票のタイトルや冒頭文、訴求ポイントをA/Bテストで検証して、スカウト文面のパターンを複数用意。

候補者アンケートで「応募をためらった理由」「辞退の理由」をヒアリングする方法がおすすめです。

応募数と歩留まりの変化は、市場環境が変わりつつあるサインだとも考えられます。

自社がターゲットとする人材にとって、本当に魅力的な提案ができているかどうか、定期的に見直しが必要な部分です。

採用単価やコストが想定を上回っている

採用単価(CPO)や応募単価(CPA)が想定以上に膨らんでいるときは、どのチャネルにどれだけ投資して、どんな成果が出ているかを整理し直す必要があります。

まずは媒体費、エージェント費用、スカウトにかけている工数、人事の稼働時間などを洗い出し、チャネル単位でコストを見える化。

次に、チャネルごとに「応募数」「面接数」「採用人数」を並べ、CPAとCPOを算出すると、費用対効果の違いが見えてきます。もし、成果が出ていない媒体に多額の予算を割いている場合は、思い切って出稿を絞り込む選択も検討したいところ。

代わりに、リファラル採用や自社採用サイト、SNSを通じた発信など、比較的コストを抑えつつ質の高い応募者を集められるように予算や時間をシフトしていきましょう。

また、採用コストの高騰には、競合他社の増加やターゲット人材の市場価値の上昇、自社側の要件過多などの構造的な背景が潜んでいるケースも少なくありません。

「この条件をすべて満たす人材は本当に必要なのか」「育成前提で採用を広げられないか」などの観点から、要件定義そのものを見直すことも、コスト最適化には欠かせないことです。

内定辞退・早期離職が増えている

採用数は計画どおりでも、内定辞退が増えたり、入社後すぐに離職する人が続いたりする場合は、採用の「質」に課題があるサインです。

まずは、内定辞退者に可能な範囲で理由をヒアリングしてみましょう。

条件面のミスマッチ、他社との比較での魅力不足、連絡の遅さやコミュニケーションの不足による不安感など、原因はさまざま。

ここでのヒアリングは、自社の採用力を高める上で貴重なヒントになります。同時に、オンボーディングや配属後フォローの体制も振り返りたいところ。

入社後のフォロー体制見直しポイント

  • 入社前後の情報ギャップが大きくないか
  • 現場の受け入れ体制が整っているか
  • 1on1や面談の機会を通じて、不安を早期に拾えているかなど

このような観点でチェックすると、早期離職を防ぐための改善すべきことが見えてきます。採用成果は「採用数×定着率」で捉えた方が、費用に見合う成果が出ているかどうか長期的に判断可能。

事業計画・組織構成が変わった

新規事業の立ち上げや既存事業の再編、リモートワーク、ハイブリッドワークの導入など、事業計画や組織構成に変化が起きたときも、採用計画の見直しが必要です。

例えば、プロダクト開発を強化するフェーズに入った企業では、エンジニアやPdMの採用を急ぐ必要が出てきます。

 一方で、顧客サポート体制を強化するタイミングでは、カスタマーサクセスやインサイドセールスの採用比率を高める判断が必要になるかもしれません。

採用計画に重要なことは、次のとおり。

採用計画に重要なこと

  • どの部署に人材が必要か
  • どのようなスキルを持つ人材が必要か
  • いつまでに人材確保すべきか
  • 何人増やすべきか

この条件は、スタートアップ期や拡大期、安定期などの成長フェーズごとに、求められる人材像や採用スピードは大きく異なります。

事業計画側の変更だけが進み、採用計画がそのままの状態では、現場の負荷が急激に高まるため同時に計画の進行が重要。

組織図や人員計画に変化があったタイミングでは、セットで採用計画を見直す仕組みをつくっておきましょう。

採用計画を見直すための8つのステップ

採用計画を見直すための8つのステップ

採用計画を見直すといっても、「どこから手をつければよいのか分からない」。

このように感じる担当者は少なくありません。感覚や経験だけで判断してしまうと、一時的な対症療法で終わりやすく、同じ問題が繰り返されてしまいます。

そこで、採用計画の見直しを進める上で押さえておきたい8つのステップを整理。

それぞれのステップごとに詳しく見ていきましょう。

現状データを可視化する

最初のステップは、現在、採用活動がどのような状態にあるのかを数値で見える化すること。

感覚だけで会話していると、現場ごとに認識がばらつき、議論がかみ合わなくなります。

目安として、過去3〜6カ月分の採用KPIを洗い出してみましょう。

例えば、次のような指標です。

可視化する指標

  • 応募数
  • 書類通過率・一次面接通過率・最終面接通過率
  • 内定数・内定率
  • 辞退率・入社率
  • 採用単価・応募単価
  • 応募から内定までのリードタイム

職種別やチャネル別、月別にデータを切り分けることで「この職種は特定チャネルからの応募が多い」「特定の月だけ歩留まりが落ちている」などの特徴が見えてきます。

どの求人広告から応募が多いのか、どの年代や経験層からの応募が中心なのかなどの応募者の傾向も併せて確認しておきたいポイントです。

求める人物像と、実際の応募者像に乖離がある場合、要件定義や訴求内容の見直しが必要。

まずは、現状を正しく測ることが、すべての改善の起点です。

課題を特定する

データを可視化したら、採用のどの工程に課題があるのかを明らかにしていきます。

応募数が足りていないのか、書類通過率が低いのか、面接での落選が多いのか、内定辞退率が高いのかなど、各工程で数値を並べると、どこで落ち込みが大きいかが可視化される。

課題を特定する上で、定量データだけで判断せず、現場ヒアリングや候補者アンケートなど定性的な情報も取り入れましょう。

アンケート回答の一例

  • 面接官が「魅力を十分に伝えられていない」と感じている
  • 候補者が「選考結果の連絡が遅くて不安だった」と回答している

このような声があれば、プロセスやコミュニケーションの見直しが必要だと分かります。

課題を特定する際は、仮説だけで終わらせず、データや現場の声で裏付けることを意識しましょう。

事業計画と採用目標を再定義する

課題が見えてきたら、事業計画との整合性を確認しながら、採用目標を再定義します。

経営層・事業責任者・人事で、今期・来期の事業計画と組織のありたい姿をすり合わせましょう。

具体的な決めていく項目は、下記を参考にしてください。

具体的に決める内容

  • どの部署で
  • どのようなスキルや経験を持つ人材を
  • いつまでに
  • 何人採用するのか

採用数だけでなく「必要な経験レベル」「期待する役割」「会社の文化とフィットするか」の観点を含めておくと、選考時の判断がしやすくなるでしょう。

また、採用人数や採用コスト、採用時期、優先度の高い職種をセットで定義しておくことで、限られたリソースの中でどこに注力すべきかが明確になります。

採用目標の再設定は、経営戦略と採用戦略の橋渡し。

「採れた人に合わせて事業を動かす」のではなく「事業を進めるために必要な人を採る」状態を目指していきましょう。

採用チャネルと手法を最適化する

次に検討したいのが、採用チャネルと手法の見直しです。

採用成果が出ていないチャネルに投資を続けると、採用単価だけが高騰し、肝心の採用成果がついてこなくなってしまいます。

求人媒体や転職エージェント、ダイレクトスカウト、リファラル、自社採用サイト、SNSなど、利用しているチャネルごとに実際の効果を比較してみましょう。

比較の際に、見るべきポイントは応募量だけでなく「応募者の質」と「定着率」。

一見すると応募数が多くても、ミスマッチが多く面接や内定で落選が続いているチャネルは、長期的に見て効率的とはいえません。その上で、次のような対策を検討します。

検討すべき対策

  • 成果の出ていない媒体への出稿を縮小し、高パフォーマンスチャネルに予算を集中させる
  • リファラルや自社サイト経由の応募を増やすための施策を強化する
  • 特定職種はエージェント経由、別職種はダイレクトスカウト中心など、職種ごとに戦略を分ける

闇雲にチャネルを増やすのではなく、データ分析に基づいてどの部分を強化するのか判断が大切。

採用体制・リソースを再編成する

採用計画を見直しても、実行する体制やリソースが不足していれば、改善は進みません。

面接官不足や人事の稼働過多、意思決定の遅さなどの課題がないかを確認しましょう。

リソースが不足している一例は、下記のとおりです。

リソース不足例

  • 採用担当が求人票作成から面接調整、書類管理、レポート作成まで一人で抱えている
  • 現場面接官のアサインが遅く、選考スケジュールが後ろ倒しになりがち
  • 最終決裁が経営層だけに集中し、承認待ちが長期化している

このような状態が続くと、せっかくの候補者を逃しやすくなります。

状況を改善するには、RPOの活用を含め、業務の切り出しを検討しましょう。

日程調整や母集団形成などのオペレーション業務を外部に委託し、人事は戦略立案やデータ分析に時間を割くなどの役割分担も1つの方法。

また、採用管理システム(ATS)を導入して情報の一元管理も、属人化の解消に役立ちます。

「採用は人の頑張りで何とかする」のではなく「仕組みで安定して回す」状態を目指しましょう。

採用ブランディングを再設計する

採用プロセスを見直しても、そもそも自社が候補者から魅力的に見えていない場合は、採用成果は思うようについてきません。

そのため、計画を見直すタイミングで、自社の「採用ブランド」を改めて設計し直すことも重要。

まずは、社員にとってのこの会社で働く魅力を洗い出します。

企業魅力の洗い出し

  • どのような経験や成長機会を提供できるのか
  • どのようなカルチャーや働き方があるのか
  • どんな人が活躍しているのか

会社の価値ポイントを言語化し、候補者の視点に立って整理が大切。

その上で、求人票・採用サイト・スカウト文面・SNSの発信内容など、候補者との接点ごとにメッセージをそろえていきましょう。

例えば、応募後のレスポンス速度を上げる、面接でのフィードバックを丁寧に行うなどの改善は、承諾率や定着率にも直結しやすいポイントです。

採用ブランディングは、短期間で完成するものではありません。

中長期で発信と改善を繰り返し「この会社で働きたい」と感じてもらえる土台を整理しましょう。

再計画を数値化して社内共有する

見直した採用計画は、KPIとして数値化した上で経営層や現場との共有が大切です。

社内で共有する内容の一例は、下記を参考にしてください。

社内で共有する内容例

  • 月ごとの目標応募数
  • チャネル別の応募数や採用数目標
  • 採用単価の目標レンジ
  • 充足率(必要人数に対して何%採用できたか)

このような指標を設定し、ダッシュボードや定例会議を通じて進捗を共有。

人事だけが知っている状態でなく、全社で追いかける採用KPIへと意識を変えていけます。

経営層が採用の重要性を理解し、採用活動に積極的に関わるようになると、意思決定のスピードも上がり円滑に進みやすくなる傾向。

また、数値の透明性が高まることで、どの施策がうまくいき、どの施策に課題があるのかを客観的に議論しやすくなります。

採用は組織全体の取り組みなのは共通認識をつくる上でも、KPIの共有は欠かせません。

月次・四半期ごとのモニタリングを設定する

最後のステップは、採用計画のモニタリングサイクルを決めることです。

月次や四半期で振り返る仕組みを構築することで、継続的な改善が進みやすくなります。

振返り内容の一例は、下記のとおり。

振返り内容の例

  • 月次:
    応募数や通過率、採用単価など短期KPIを確認し、直近の打ち手を調整する
  • 四半期:
    定着率やチャネル別ROIなど中長期KPIを見ながら、予算配分や採用戦略の方向性を見直す

振返り時の会議では、「達成率の確認 ・ 要因分析 ・ 次の打ち手決定」という流れをテンプレート化しておくと、議論がブレにくくなります。

GoogleスプレッドシートやLooker Studioなどのツールを使い、だれでも状況を確認できるよう可視化しておくと、日常的なモニタリングがぐっと楽になるでしょう。

大事なのは、「計画を守ること」が目的にならないこと。

環境変化を観察し、進むべき方向を決め、素早く行動を修正していく文化が育つほど、採用の成功率も高まりやすくなります。

採用計画の見直しに活用できる主要指標

採用計画を見直す際は、感覚ではなくデータに基づいての判断が重要。

そのためには、どの指標を見れば採用の量やプロセスの効率、採用の質、費用対効果などが把握できるのかを整理しておく必要があります。

それでは、詳細を見てみましょう。

採用数値のKPI

まず押さえておきたいのが、採用活動の全体成果を定量的に把握するための基本的なKPIです。

代表的な指標として、次のようなものがあります。

KPIにする項目

  • 応募数
  • 採用人数
  • 内定数・内定率
  • 充足率(計画人数に対して実際に採用できた割合)
  • 採用単価(採用1人あたりにかかった費用)

これらは、採用活動の「入口から出口」までを俯瞰して見る上で欠かせない指標。

例えば、応募数が多いのに採用人数が伸びていない場合は、要件定義や選考基準、候補者体験などのどこかに課題が潜んでいる状況と考えられます。

 一方で、職種別やチャネル別、時期別などの指標を並べて見ると、どの職種へリソースを優先すべきかや、どのチャネルに改善余地があるかなどの判断材料が得られるでしょう。 

さらに、単月評価だけでなく、過去3〜6カ月の推移を追うことで、市場の変化を把握可能。

また、採用人数の目標は人員計画や事業計画と方針を合わせることが重要です。

内定率は、ターゲット層や職種ごとに分けて算出すると、より精度の高い分析が可能になるでしょう。

プロセス効率のKPI

採用プロセスの効率を測るKPIが見えていないと、なぜ採用が進まないのかが分からないまま、担当者だけが忙しくなってしまいます。

代表的なKPIは、次のとおりです。

KPIにする項目の代表例

  • 面接設定率(応募に対して面接に進んだ割合)
  • 書類通過率・各面接の通過率
  • 辞退率(選考途中・内定後などフェーズ別に見る)
  • 選考リードタイム(応募から内定までの日数)

これらの指標を組み合わせると、下記のように読み解けます。

KPIから読み解けること

  • 書類通過率は高いが内定率が低い = 面接評価基準のすり合わせに課題がある
  • 面接通過率は悪くないが辞退率が高い = 条件や情報提供の仕方に問題がある

改善策としては、選考ステップの見直しや面接官トレーニング、日程調整の自動化などが考えられるでしょう。効率化と聞くと「スピードを上げること」だけに意識が向きやすいですが、候補者体験の質向上にもつながるかどうかを意識したいところです。

成果・定着のKPI

採用のゴールを「内定承諾」で終わらせず、戦力として活躍している状態に置くのであれば、入社後の定着や活躍度を測る指標も押さえておく必要があります。

例えば、次のような指標です。

入社後の定着のKPI例

  • 定着率(入社3カ月・6カ月・1年時点で在籍している割合)
  • 早期離職率(一定期間内に離職した割合)
  • 評価制度や目標管理の活躍度
  • 1on1やアンケートなどで得られるエンゲージメント指標

入社後の定着率が低い場合は、採用段階での期待値コントロールやカルチャーフィットの見極めに課題がある可能性があります。

評価が高い人はどのような経路で応募し、どのような選考プロセスを経て入社しているのかを分析すると、採用の質を高めるヒントが見えてくるでしょう。

採用と入社後のフォロー、育成施策を連動させることで、定着率や活躍度の改善に寄与。

短期のKPIでは見えない価値を測る指標として、定着や活躍のデータも追いかけていきましょう。

ROI・費用対効果指標

採用活動で成果を最大化するには、限られた予算をどのチャネル・施策に投下すべきかを正しく判断する必要があり、そのために重要になるのが、採用活動の費用対効果を測る指標。

代表的な指標は以下のとおりです。

費用対効果を測る指標

  • 採用ROI:
    一般的には「(利益(リターン)÷ 投資(採用コスト))× 100」で算出する指標。成果の定義は企業によって異なるものの、内定充足度、早期戦力化、人件費とのバランスなどを含め評価します。
  • CPA(Cost Per Applicant/応募単価):
    1名の応募を獲得するためにかかった費用。
  • CPO(Cost Per Offer または Cost Per Hire/採用単価):
    1名を採用(または内定承諾)するまでにかかった総費用。

これらを媒体別・チャネル別・職種別に比較することで、投資を拡大すべき領域と縮小すべき領域が明確に。費用の算出にあたっては、広告費やエージェント費用だけでなく、

  • 人事担当者の稼働時間
  • 現場面接官の面接負荷
  • オペレーションコスト

といった人的コスト(Time Cost)も含めることで、実態に近い正確な評価が可能。

ROIを高めるための具体策

  • 成果の高いチャネルへの集中投資:
    定量データに基づき、最も効率の良いチャネルの比率を高める。
  • リファラル採用の強化:
    通常低コストかつ定着率が高く、費用対効果が高い施策。
  • ATS導入や選考プロセス改善による工数削減:
    手作業の削減により、人的コストを下げられる。

費用分析は一度で終わりではなく、市場状況や自社の組織フェーズによって最適解が異なるため、四半期ごとの定点観測を行い、継続的にチャネル配分や施策の最適化を進めていきましょう。

採用活動のROIについては、こちらの記事で詳しく解説
採用ROIとは?計算方法や活用方法・ROIを高めるためのポイントを解説

採用計画の見直しを成功に導く仕組化ポイント

採用計画の見直しを成功に導く仕組化ポイント

ここまで解説してきたステップや指標を実務で確実に機能させるには、担当者個人の努力に依存しない“仕組み化”が欠かせません。

再現性のある採用運用を実現するために、どのような体制やツール、プロセスを整えるべきかを明確にしていきます。ここからは、以下のポイントを解説。

それぞれのポイントを詳しく見ていきましょう。

経営・人事・現場の連携体制を強化する

採用を人事だけの活動として扱っていると、戦略と現場の実態がずれていきやすい。採用計画の見直しを成功させるには、経営・人事・現場が一体となった全社協働体制づくりが重要。

まずは、採用を「経営課題」として位置づけ、経営層が策定や見直しに関与する形を整えましょう。

一方で、現場からは「どのような人材が必要か」「どのようなスキルやマインドを持った人が活躍しているか」などの具体的な情報を早い段階で吸い上げる必要があります。

仕組み作りは、下記を活用するとよいでしょう。

活用するべき仕組み作り

  • 週次・月次の採用進捗ミーティング
  • 採用KPIを共有するダッシュボード
  • Slackなどを活用したリアルタイムの情報共有

経営、人事、現場の情報が縦割りにならないよう、採用に関する数字や情報は全社で共有する前提をつくることで、意思決定のスピードも上がりやすくなります。

採用データを蓄積・分析する仕組みを整える

属人的な判断から脱却し、採用活動を継続的に改善していくためには、データを蓄積や分析できる仕組みを構築していくことが不可欠です。

ATS(採用管理システム)などを活用し、応募・内定・入社・定着までのデータを一元管理しましょう。チャネル別の応募数や選考通過率、辞退率、採用単価などを時系列で蓄積しておくと、後から振り返ったときに傾向が把握しやすくなります。

採用データから見えてくる例は、下記のとおり。

データ分析例

  • 特定チャネルからの採用者の定着率が高い
  • 特定職種では、ある選考フローを採用した年度の方が内定率が良かった

傾向が見えてくれば、それをもとに採用戦略を見直しできます。

重要なのは、数値を分析して終わりにせず、具体的なアクションに落とし込むサイクルを仕組みとして回すことです。

採用ブランドと候補者体験を改善する

採用計画の見直しを、採用プロセスやKPIの話だけで終わらせてしまうと、本質的な改善につながりにくくなります。候補者から選ばれる会社であり続けるためには、採用ブランドと候補者体験の両方を磨いていくことが欠かせません。

まずはEVP(Employee Value Proposition)を再整理し、「自社で働くことの価値」を言語化しましょう。

会社価値の一例は、下記のとおりです。

会社価値の一例

  • どんなミッションに向かっているのか
  • どのような成長機会やキャリアパスがあるのか
  • どのような文化や働き方を大切にしているのか

このような情報を、求人票・採用サイト・スカウト・SNS・面接など、すべての接点で一貫して伝えていきます。同時に、CXの改善にも取り組みたいところ。

面接官トレーニングでコミュニケーションの質を高める、選考状況の連絡をこまめに行う、候補者にとって不安になりやすいポイントを事前に説明しておくなど、できる工夫は多く存在。

採用ブランディングと候補者体験の向上は、応募率・承諾率・定着率すべてに好影響を与えるテーマです。中長期の視点で、計画的に取り組んでいきましょう。

よくある見直しの失敗と回避策

ここまで紹介したステップ通りでも、採用計画の見直しがうまく機能しないことも。

よくあるのは、「数字だけ直して根本課題を放置してしまう」「関係者の合意形成が不十分なまま計画を変えてしまう」などのパターンです。

ここでは、代表的な失敗例を4つ挙げ、回避策を整理します。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

数字のズレだけ直して“根本課題”を放置する

「応募数が足りないから、とりあえず広告出稿を増やす」「採用単価が高いから、安い媒体に切り替える」などの対処は、短期的には数字を整えられるかもしれません。

しかし、原因を見極めないまま数字だけを合わせようとすると、同じ問題が形を変えて繰り返されてしまいます。大切なのは「なぜその数字になっているのか」を掘り下げること。

要件定義が市場と合っていないのか、評価基準が曖昧なのか、選考フローが複雑すぎるのか、候補者への情報提供が不足しているのか。

定量・定性データから課題を読み取り、仮説を立てて、それを検証しながら採用戦略やフローを再設計していく流れを意識しましょう。

現場や候補者、経営層など複数の視点からヒアリングを行うことで、表面的な数字だけでは見えない根本課題が浮かび上がってきます。

経営層・現場との整合が取れていない

採用計画が人事部門だけで完結し、経営層や現場との認識にズレが生じている状態。このような状況では、採用活動が容易に空回りしてしまいます。

よくある現場との認識の相違は、下記のとおりです。

よくある認識相違例

  • 経営は中長期の成長を見据えた人材獲得をイメージしている一方で、現場は今の欠員補充だけを考えている
  • 現場は経験者を希望しているが、経営はポテンシャル採用を増やしたいと考えている

こういったギャップがある場合、いくら採用施策を変えても期待どおりの成果は出ません。

経営層や現場とのズレを防ぐためには、採用目標を経営計画とリンクさせた上で、求める人物像を文書化し、関係者間で合意しておくことが重要。

定例会議などを通じて合意内容を定期的に見直し、状況に合わせてアップデートしていきましょう。

人事は、経営と現場の間に立つファシリテーターとして、双方の意見を翻訳し、すり合わせることも大切な役割です。

採用担当のリソース不足で改善が停滞する

採用計画の見直しがうまくいかない原因として多いのが、改善の必要性は分かっているのに、日々の業務に追われて手が回らないパターンです。

求人掲載・候補者対応・面接調整・書類管理・社内調整など、オペレーションだけでも相当な負荷がかかります。この状態でデータ分析や戦略立案まで担おうとすると、どうしても後回しになりがち。

解決策の一例を下記より見てみましょう。

解決策の例

  • 業務プロセスを棚卸しし、標準化・マニュアル化する
  • ツール導入で自動化できる業務を切り出す
  • RPOや採用代行など外部パートナーを活用する
  • 人事内で「戦略担当」と「実務担当」を分けるなど

採用担当が「考える時間」を確保できるようになって初めて、採用計画の見直しも前に進みやすくなります。

短期目線で修正して中長期計画を軽視する

今期の採用目標を達成しなければならないというプレッシャーが強まると、どうしても短期的な数値に意識が偏りがちです。

しかし、目先の採用数だけを追い続ける運用では、中長期的に望ましい人材ポートフォリオを構築することが難しくなってしまいます。

採用計画は、本来1〜3年程度のスパンで「どのような人材構成の組織をつくるのか」を描くもの。

そのため、半期・年度ごとに採用ROIや人材要件を振り返り、次年度の採用計画へ継続的にフィードバックするサイクルが欠かせません。

短期施策と中長期戦略を切り離さず、以下の観点を踏まえて計画を立てることが重要です。

計画を立てる上で大切なこと

  • 今期の採用施策が、来期以降の組織づくりにどのような影響を与えるか
  • どのポジションを、いつまでに確実に充足させる必要があるか

即効性のある改善と、持続的な組織づくりを両立させながら、採用戦略を進化させていきましょう。

採用計画は「立てる」から「進化させ続ける」時代へ

採用計画は、一度立てて終わりの静的な計画ではありません

市場環境や事業戦略、組織フェーズは刻々と変化。

変化に合わせて、データをもとに現状を把握し、課題を特定し、チャネルや体制、ブランディングを見直し続けることで、ようやく機能する採用計画に近づいていきます。

ただ、自社だけで戦略立案から改善実行まで担うのが難しいケースもあるはずです。

そのような場合は、採用に精通した外部パートナーと協働し、専門知識や実行力を取り入れることで、採用の成果が大きく変わります。

社外の知見を戦略から実行まで一貫して生かしながら、採用計画を立てるだけのものから、進化させ続ける資産へと変えていきませんか。

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執筆者

金田大和

株式会社b&q 執行役員

横浜国立大学卒。プロップテック企業にて、リテンションマーケティング事業や人事コンサルティング事業の立ち上げ、事業責任者として推進。その後、代表高稲とb&qを共同創業し、現在は執行役員として、多くの企業にHRを通じて本質的な価値を届けるべく、コンサルティング事業を含む複数のHR事業を管掌。これまでのキャリアを通じて合計500社以上の人事と対話し採用/組織改善を図る。