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採用プロセスの改善方法とは?見直すべきサインや改善のメリットも紹介

採用プロセスの改善方法とは?見直すべきサインや改善のメリットも紹介

深刻な人材不足が続く日本において、従来の採用手法に限界を感じ、プロセスそのものを抜本的に見直したいと考える採用担当者や経営者の方が急増。

しかし、現状を変えようと真剣に取り組むほど「過去の成功体験」や「自社の慣習」が足かせとなり、どこから手をつけるべきか迷ってしまうことも少なくありません。

時代とともに求職者の意識や市場環境が変化している今、採用プロセスもアップデートしなければ、知らぬ間に大きな機会損失を生んでしまう可能性も。

そこで本記事では、曖昧になりがちな採用プロセスの全体像を整理し、見直すべき危険なサインや、明日から使える具体的な改善手法を徹底解説します。

現状の課題をクリアにし、自社の採用活動を「選ばれる採用」へとブラッシュアップするための指針として、ぜひ最後までお役立てください。

採用プロセスとは?

採用プロセスとは、「企業が人材を採用する際の流れを段階的に整理し、効率的かつ質の高い採用を実現するための仕組み」を指します。

これは単なる“作業手順”の羅列でなく、企業の成長戦略と人材確保をつなぐ重要な経営基盤。

例えば、採用プロセスが不明確な組織では、面接官ごとの質問内容のばらつきや、感覚任せの合否判断が横行しがちです。さらに、連絡の遅滞は候補者の意欲低下を招き、内定辞退という大きな機会損失を生んでしまいます。

一方、プロセスを体系化できれば、判断基準が統一され、属人化や入社後のミスマッチを未然に防ぐことが可能。「どの工程で候補者が離脱しているのか」といった数値の“見える化”も進むため、データに基づいた改善も容易に。

また、求職者に対してもスムーズで透明性の高い選考体験を提供でき、「対応が早くて信頼できる会社」というエンゲージメントの向上にも寄与。

採用活動は「人を選ぶ」場であると同時に、「未来を共につくる仲間を見つける」相互理解の場でもあり、採用プロセスの戦略的な設計・運用が、安定した組織づくりと持続的成長の鍵となる。

採用プロセスの主な流れ

採用プロセスの主な流れ

採用プロセスは、大きく分けて次の7つのフェーズで構成されます。

各フェーズの具体的な内容と、採用成功のために押さえておくべきポイントを解説。

採用計画の策定

採用活動の成否を分ける出発点が「採用計画の策定」です。

まず、会社の事業戦略や中期経営計画に基づき、採用人数・職種・スキル要件・採用期間などを具体的に落とし込みます。

この段階では、市場相場を気にするよりも先に、「事業目標を達成するために不可欠な人物像(要件定義)」を明確にすることが重要。

ここが曖昧なまま進めると、現場ニーズとのズレが生じたり、入社後のミスマッチによるコストの浪費を招いたりする恐れがあります。

また、定性的な人物像だけでなく、応募数・歩留まり・採用単価といった定量的なKPI(重要業績評価指標)を設定し、進捗を客観的に管理できる体制を整えましょう。

重要なのは、「採用目標=事業成長に必要な人材への投資」という視点を持つこと。

単なる「欠員補充」ではなく、「将来の組織を支える仲間探し」と捉えて計画を練ることで、採用活動全体の質と熱量は大きく向上します。

母集団形成

効果的な母集団形成は、採用成功の鍵を握る最重要フェーズの一つ。

まず、求人媒体だけに頼るのではなく、スカウトサービス、リファラル、SNSなどを組み合わせ、複数の入り口(チャネル)を持つことで、ターゲット層への接触頻度と応募の安定性を高めます。

しかし、単に露出を増やすだけでは意味がありません。そこで欠かせないのが、ターゲットの心に響く訴求設計、いわゆる「採用ブランディング」です。

自社の採用サイトや求人票を、今一度見直してみてください。

「創業〇〇年の歴史」「業界シェアNo.1」といった「企業の自慢話」ばかりが並んでいないでしょうか?

重要なのは、求職者目線に立ち、「この会社で働くことで得られる経験・メリット」を明確に打ち出すことです。また、掛け捨ての広告モデルから脱却し、オウンドメディアの発信やタレントプールの構築など、「資産になる採用チャネル」を育てる視点も重要。

幅広いアプローチと魅力的なコンテンツを通じて、企業が「選ばれる側」としての存在感を高めることが、本質的な採用力の強化につながります。

書類選考

書類選考は、応募者のスキル・経歴・志向性が自社の要件とどの程度マッチしているかを確認する、一次スクリーニングの工程です。

効率的かつ公正に判断するために、評価基準を「必須条件(Must)」「歓迎条件(Want)」「除外条件(Negative)」の3つに分類し、スコアリングによって客観性を保ちましょう。

また、近年ではATS(採用管理システム)やAIによる自動仕分け機能を活用し、工数を削減しつつ精度の高い選考を行う企業も増えています。

書類選考の目的は、単に候補者を振るい落として人数を絞ることではありません。「次の面接で会うべき人を見極める」ことこそが本質。

そのため、市場動向や応募状況に応じた基準のチューニングが欠かせません。

例えば、応募数が少なければ「必須条件」を少し緩めて「歓迎条件」へ移行させ間口を広げたり、逆に応募が殺到しているなら条件を厳格化したりと、柔軟な運用が求められます。

明確な基準設定とデータ活用、そして状況に応じた柔軟性を組み合わせることで、選考の効率化とミスマッチ防止を両立させましょう。

採用面接

採用面接は、候補者理解と自社理解の双方を深める最も重要なフェーズ。

面接の目的は、企業の基準で一方的に“評価”することだけではありません。候補者の不安を解消し、自社への志望度を高める「相互理解と動機形成(アトラクト)」の場でもあります。

そのため、一方的な質問攻めにするのではなく、話しやすい雰囲気を作り(過度な緊張を和らげる、安心してリラックスできる環境)、候補者の本音を引き出すことが重要。

また、面接の中で「良い」と感じたポイントがあれば、その場でフィードバックすることを強くおすすめします。

候補者が「手応えがなかった」「落ちたかもしれない」と不安を感じたまま帰してしまうと、その足で他社へ応募してしまったり、意欲が下がったりするリスクが高まるためです。

合否を確約する必要はありませんが、「あなたの○○という経験は、自社でこう活かせると思います」と評価点を伝えるだけで、候補者の安心感と志望度は大きく向上。

運用面では、一次・二次・最終の役割(見極める項目)を明確化し、評価基準を統一することで、面接官による判断のブレを防ぎましょう。

オンラインやAI面接も活用しつつ、スピードと質を両立させることが求められます。

面接は採用の成否を左右するだけでなく、企業のブランドイメージを決定づける接点であることを忘れてはいけません。

内定通知・フォロー

内定通知から入社までの期間は、辞退防止だけでなく、入社後の定着率を左右する極めて重要なプロセス。まず、内定通知はスピードと熱量が命です。

最終面接から間を置かずに連絡し、「なぜあなたを採用したいのか」という期待を誠実に伝えることで、候補者の入社意欲を一気に高めることが可能。

しかし、承諾後も油断はできません。多くの候補者は「本当にこの会社でやっていけるだろうか」という不安(いわゆる内定ブルー)を抱えています。

そのため、事務的な連絡だけで放置せず、専任のフォロー担当者(リクルーター)をつけて定期的にコミュニケーションを取ることが不可欠です。

具体的には、「内定者懇談会」や「先輩社員とのランチ」「社内見学」などを実施し、入社後の働く姿を具体的にイメージさせることで、心理的な距離を縮め、辞退リスクを最小限に抑えましょう。

内定はゴールではなく、社員としてのスタートライン。

入社前から丁寧な関係構築を行うことが、優秀な人材の確保と、長期的なエンゲージメント(愛社精神)の醸成につながります。

入社後オンボーディング

採用活動の真のゴールは「入社」させることではありません。入社した人材が組織に馴染み、「定着し、活躍すること」こそが本来の目的です。

多くのコストと時間をかけて採用しても、早期に離職されてしまっては、企業にとって大きな損失。そこで不可欠となるのが、組織全体で新入社員をサポートする「オンボーディング」の仕組み。

具体的には、入社後3ヶ月程度を重点期間とし、業務レクチャーだけでなく、メンター制度や定期的な1on1面談を通じて、孤立を防ぎながら戦力化を促進します。

とくに重要なのは、早期に「小さな成功体験」を積ませてあげること。

「自分はこの会社で役に立っている」という実感が自信となり、仕事へのやりがいや組織への愛着を育みます。そのためには、人事任せにするのではなく、人事・現場・上司が連携した「三位一体」の支援体制が欠かせません。

新入社員の心理的安全性を確保し、スムーズな適応を促すオンボーディングは、採用活動の「総仕上げ」として計画的に実行しましょう。

効果測定・改善

採用活動を持続的に最適化するためには、「感覚」や「経験則」ではなく、定量的なデータに基づいた改善サイクルの構築が不可欠です。

主要なKPI(重要業績評価指標)として、応募数・面接通過率(歩留まり)・内定承諾率・採用単価・早期離職率などを定点観測しましょう。

これらのデータ分析により「どこで候補者が離脱しているのか」というボトルネックが明確に。

例えば「母集団形成は順調だが、内定承諾率が低い」というデータが出た場合、「他社に競り負けている」や「選考スピードが遅い」といった具体的な仮説が立ち、的確な手が打てます。

重要なのは、一度の改善で終わらせず、継続的にPDCAサイクルを回す仕組みを作ること。

定例の振り返りミーティングをスケジュールに組み込み、結果が良い時も悪い時も「なぜそうなったのか」を言語化してチームで共有しましょう。

周囲を巻き込みながらデータドリブンで採用をマネジメントすることこそが、コスト最適化と採用精度の向上を両立させる最短ルートです。

採用プロセスでよくある課題と見直しのサイン

採用プロセスでよくある課題と見直しのサイン

採用プロセスにおいて、成果を阻害する「ボトルネック」には明確なパターンが存在します。多くの企業がつまずきやすい、代表的な5つの課題は以下の通り。

もしこれらに心当たりがあるなら、それはプロセス改善の合図かもしれません。

ここからは、それぞれの課題が発生している時に現れる「見直すべきサイン」について具体的に解説します。自社の状況と照らし合わせながら読み進めてみてください。

応募数不足・母集団形成の停滞

応募数が目標に届かない、あるいは以前より減少している場合、母集団形成の入口部分に致命的なボトルネックがある可能性があります。

主な原因は、「求人チャネルの偏り」「求人票の訴求力不足」「採用ブランディングの欠如」の3点に集約されます。

例えば、求人媒体に依存しきりでSNSやスカウトを活用できていないケースや、求人票が単なる「条件の羅列」になり、「働く魅力」や「成長環境」が伝わっていないケースが後を絶ちません。

競合が多い市場において、自社の強みや独自性を発信できていないと、求職者に「他社との違い」は伝わらず、「この会社“でも”良い」ではなく、「この会社“が”良い」と思ってもらえなければ、最終的な応募にはつながらない。

もし、「求人ページのアクセス数はあるのに応募が少ない」「スカウトの返信率が以前より下がっている」といった兆候があるなら、それは危険なサインです。

直ちにターゲット設定を見直し、訴求内容(コンテンツ)の改善とチャネルの多角化を同時に進める必要があります。

選考スピードの遅延・候補者離脱

売り手市場の採用活動において「選考スピードの遅れ」は候補者離脱を招く最大の敵。

日程調整のメール往復、書類確認の停滞、面接官のスケジュール確保の遅れ……これら一つひとつは些細なことでも、積み重なれば候補者体験(CX)を著しく悪化させます。

とくに、応募から内定出しまでに「2週間」を超える場合、スピード感のある他社に先を越され、辞退されるリスクが跳ね上がります。

例えば、一次面接後に結果連絡が1週間空くだけでも、候補者の熱意は冷め、「自分は重要視されていない」という不信感につながりかねません。

昨今の市場では“スピード採用”がスタンダードになりつつあり、「遅い」というだけで競争力を失うのが現実。

改善策としては、AI面接やオンライン面接の活用はもちろん、日程調整自動化ツールを導入し、事務工数を極限まで削る施策が有効です。

また、社内事情でどうしても時間がかかる場合は、「現在選考中ですので、〇日までお待ちください」と一報を入れるだけでも、候補者の不安は和らぎます。

「レスポンスの早さ=企業の誠実さ」です。

採用スピードを「採用ブランドの一部」として位置づけ、迅速な対応を徹底しましょう。

評価基準の不統一・属人化

面接官によって評価基準が異なる状態は、採用の公平性を損なうだけでなく「採用の再現性」を著しく低下させます。

典型的な属人化の例として、「面接官ごとに質問内容がバラバラ」「“なんとなく印象が良いから”という感覚(直感)で合否を決めている」といったケースが挙げられます。

また、学歴や経歴の一部だけに引きずられる「ハロー効果」や、無意識のバイアスも、評価のばらつきを招く大きな原因です。

「誰が面接するかで結果が変わる」状態では、企業として求める人物像が曖昧になり、入社後のミスマッチや早期離職が避けられません。

改善策としては、共通の「評価シート」や「スコアリング制度」を導入し、評価項目を定量化する「面接の構造化」が最も有効。

さらに、ツールを入れるだけでなく、定期的な面接官トレーニングを実施し、質問の意図や評価の目線合わせを行うことも欠かせません。

面接官ごとの通過率や辞退率をデータで比較・可視化し、属人化の度合いをモニタリングし続けることで、組織全体の採用力を底上げしましょう。

内定辞退・早期離職の増加

苦労して内定を出したのに辞退される、あるいは入社直後に退職されてしまう……この現象が増えている場合、候補者の「入社前後のフォロー体制」に重大な欠陥がある可能性が高い。

主な原因は、「連絡の遅れによる他社への流出」と、入社後に「聞いていた話と違う」と感じる「リアリティ・ショック(幻滅)」の2つです。

例えば、内定通知が遅いために競合他社に気持ちが移ってしまったり、入社前の情報提供が不足していたために、実際の業務内容や社風とのギャップに耐えられなくなったりするケースが典型的。

とくに、オンボーディング(定着支援)が機能していない組織では、入社1〜3ヶ月以内の「最も採用コストが無駄になるタイミング」での離職が多発します。

改善策としては、内定者フォローの専任担当(リクルーター)を明確化し、定期的な連絡や懇談会・社員交流会を通じて、心理的なケアと情報提供を行いましょう。

採用活動は“入社まで”がゴールではありません。“活躍・定着するまで”を見据えた支援体制を設計して初めて、採用成功と言えるのです。

採用コスト高騰・ROIの不透明化

採用コストは年々増加傾向にありますが、「予算をかけているのに、それに見合う成果が見えてこない」という悩みを抱える企業は少なくありません。

媒体費、エージェント手数料、制作費、そして内部の人件費……採用コストの構造は複雑で、放っておくと不明瞭になりがちです。

とくに、「どのチャネルが最も効率よく採用できているか」を把握しないまま予算を投じるのは、穴の空いたバケツに水を注ぐようなもの

これではコストだけが膨らみ、ROI(投資対効果)の判断ができなくなります。

例えば、漫然と求人広告に毎月数十万円を支払い続けているものの、実際の応募や採用にはほとんど繋がっていないケースも散見されます。

これは明らかに、振り返りと予算配分の見直しが機能していないサインです。

改善の第一歩は、チャネルごとの採用単価(CPA)を可視化し、費用対効果を厳しく比較・検討すること。

最近では、採用管理システム(ATS)のダッシュボードを活用し、リアルタイムでコストパフォーマンスを可視化する企業が増えています。

「どんぶり勘定」から脱却し、データに基づいた戦略的な投資配分を行うことこそが、採用効率を最大化する鍵となります。

採用プロセスを改善する5つの方法

採用プロセスを改善する5つの方法

課題の所在が見えてきたところで、次は具体的な改善アクションに移りましょう。採用プロセスを単なる「作業」から「勝てる仕組み」へと進化させるためには、以下の5つのアプローチが有効。

戦略の見直しから外部リソースの活用まで、成果に直結する施策を順に解説します。

採用戦略の再定義と目標設定

採用プロセス改善の第一歩は、マインドセットの変革。

採用活動を単なる「欠員補充(数合わせ)」として捉えるのではなく、「経営戦略を実現するための未来への人材投資」と再定義することからすべては始まります。

まず、採用目標を事業戦略や中期経営計画と深く紐づけ、「なぜ今、採用が必要なのか」を明確化。その上で、「どんな人材を」「いつまでに」「どの手段で」獲得するのかを明文化しましょう。

例えば、3年後の新規事業拡大を見据えた採用であれば、現時点でのスキルよりも「変化への適応力」や「次世代リーダーの資質」を最優先にするなど、経営戦略と採用要件の一貫性が不可欠。

また、理念だけでなく、応募数・通過率・内定承諾率・採用単価といった具体的なKPIを設定し、進捗を定量的にモニタリングできる体制も作りましょう。

これらを推進するには、人事だけで完結させず、経営層・現場・人事の三者が「三位一体」で連携することが欠かせません。

目的が曖昧なまま走り出しても、改善の方向性は見出せません。全員が同じ目線で語れる「明確な戦略」を描くことこそが、採用活動を成功させるための出発点となります。

ペルソナ設計と評価基準の標準化

採用のミスマッチを根本から防ぐには、理想の人材像(ペルソナ)の定義を「具体的かつ高解像度」に行うことが不可欠です。

まず、現場へのヒアリングや「ハイパフォーマー分析」を行い、どのような要素を持つ人が実際に成果を出しているのかを言語化します。

既存社員の成功パターンを抽出し、「スキル(能力)」「志向性(マインド)」「価値観(カルチャー)」の3階層で整理すると、ブレない軸が完成。

次に、そのペルソナをもとに、面接官全員が共通のモノサシで判断できる「面接の構造化」を進めましょう。

例えば、行動特性を見抜く「STAR法(Situation・Task・Action・Result)」を活用して質問項目を統一し、スコアリングシートを用いて定量評価を行う方法が極めて有効です。

目指すべきゴールは、「誰が面接官を務めても、同じ評価結果になる(再現性がある)」状態。

属人的な「感覚」や「好み」に頼った選考は、品質のバラつきを招くだけでなく、入社後のミスマッチの温床となります。

評価基準を標準化することは、選考の公平性を担保するだけでなく、自社に最適な人材を“狙って採る”ための最短ルートとなるのです。

データ活用による課題可視化とスピード最適化

感覚や経験則に頼った採用活動では、問題の本質が見えず、的確な改善の方向性を打ち出せません。

重要なのは、採用プロセス全体を数値で管理し、「どこで候補者が詰まっているか(ボトルネック)」を可視化することです。

具体的には、応募数・書類通過率・面接通過率・内定承諾率・採用単価といったKPIを設定し、各工程の歩留まり(採用ファネル)をモニタリングします。

たとえば、「一次面接の通過率が20%以下と極端に低い」「内定承諾率が50%を割っている」といったデータが出れば、そこに是正すべき課題があることは一目瞭然。

数値という根拠があれば、改善の優先順位が明確になり、ツール導入やフロー変更などの意思決定もスムーズになります。

また、選考データを分析して「平均選考期間(リードタイム)」を短縮することは、最大の辞退防止策に。

日程調整の自動化や面接回数の適正化など、データに基づいた判断で属人性を排除し、「スピード」と「精度」を両立した科学的な採用体制を構築しましょう。

採用DX(ATS・AI・RPA)による業務効率化

採用活動が活発になればなるほど、日程調整やメール返信といった膨大な事務作業(ノンコア業務)が発生し、本来向き合うべき「候補者との対話」や「戦略立案」がおろそかになりがち。

このジレンマを解消するために不可欠なのが、テクノロジーの活用です。

まず、ATS(採用管理システム)を導入すれば、候補者情報の管理・進捗共有・レポート作成が一元化され、脱エクセル・脱属人化が実現します。これにより、事務工数を劇的に削減できます。

さらに、AI面接による一次スクリーニングの効率化や、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を活用した日程調整・データ入力の自動化も有効。

重要なのは、「人が判断し、心を動かすべきコア業務」と、「機械に任せてスピードを上げるべき業務」を明確に切り分けること。

システム導入にはコストがかかりますが、それによって得られる「選考スピードの向上」「機会損失の防止」「採用担当者のパフォーマンス向上」は、中長期的に見て極めて高いROI(投資対効果)を生み出します。

採用DXは単なる業務効率化ではありません。事務作業から解放され、「戦略人事」へと転換するための必須基盤なのです。

RPO・外部リソースの戦略的活用

採用業務のすべてを自社リソースだけで完結させようとする「自前主義」には限界があります。

採用スピードと品質を両立させるためには、プロの力を借りる「RPO(Recruitment Process Outsourcing)」や外部エージェントの活用が必須。

例えば、スカウト配信、日程調整、一次スクリーニングなどの「定型業務(ノンコア業務)」を外部へ委託することで、人事担当者は採用戦略の立案や、候補者の意向上げといった「人事がやるべきコア業務」にリソースを集中できます。

また、外部パートナーは採用市場のトレンドや他社事例に精通しているため、ニッチな職種の母集団形成においても強力な味方となります。

重要なのは、丸投げするのではなく、内製と外部を組み合わせた「ハイブリッド運用」を行うこと。

「意思決定と戦略」は社内で握り、「実行とオペレーション」は外部と協働する。この役割分担こそが、柔軟かつ強固な採用体制を構築するポイント。

限られたリソースを最適に配分し、チーム全体で成果を最大化する視点が、現代の採用成功の鍵となります。

採用プロセスを改善するメリット

採用プロセスを改善するメリット

採用プロセスの見直しは、単なる業務効率化にとどまりません。

無駄を省き、戦略的にプロセスを再構築することで、企業の採用力そのものが底上げされ、結果として以下のような4つの大きなメリットが得られます。

具体的にどのような効果が期待できるのか、一つずつ詳しく見ていきましょう。

採用スピードの向上と辞退率の低下

採用プロセスを最適化することで得られる最大の成果は、「選考スピードの向上」と、それに伴う「辞退率の劇的な低下」です。

売り手市場の現在、優秀な人材ほど複数社から引く手あまたです。応募から内定までの期間を短縮することは、他社内定による“人材の取りこぼし(機会損失)”を防ぐ防波堤となります。

例えば、従来3〜4週間かかっていた選考期間を、自動化ツールやフローの見直しによって「2週間以内」に短縮できれば、候補者の熱意が高い状態で内定を出し、クロージングまで持ち込むことが可能。

また、対応の早さは「候補者体験(CX)」の向上に直結します。

「日程調整の返信が早い」「次のステップへの案内がスムーズ」といったポジティブな印象は、候補者に“自分は大切にされている”という安心感を与え、企業への信頼度(志望度)を底上げします。

具体的には、日程調整ツールの導入、役員承認フローの簡略化、オンライン面接の積極活用などが有効。

スピードは単なる効率化ではありません。「スピード=企業の誠実さ」として評価され、採用競争力を決定づける重要な要素になるのです。

採用コスト削減とROI最大化

採用プロセスの改善は、単なる“コストカット”ではありません。その本質は、「投資対効果(ROI)を最大化するための予算配分の最適化」にあります。

広告費、エージェント手数料、制作費、そして内部の人件費……採用コストの内訳は多岐にわたりますが、プロセスを可視化することで、「どこにお金と時間が消えているのか」を正確に評価できるように。

これにより、成果が出ていない「死に金」となっている施策を停止し、その予算をリファラルやダイレクトスカウトといった「低コスト・高成果が見込めるチャネル」へ再配分することが可能になります。

また、採用ROIは単なる「採用単価」の低さだけで測るものではありません。

「成果(人材の質・定着率)÷ 費用」という視点で見ることで、その採用が経営にとってどれだけのリターンを生んでいるかを定量的に判断できるようになります。

重要なのは、やみくもに費用を減らすことではなく、成果につながる「勝ち筋」に重点投資すること。

無駄を削ぎ落とし、必要な場所に資金を投じることで、結果として採用単価が適正化され、採用品質も向上するという「好循環」が生まれるのです。

定着率・活躍率向上による採用品質の改善

採用プロセスの質を高めることは、内定後・入社後の成果に直結。

ペルソナ設計の解像度を高め、面接基準を統一することで、入社後のミスマッチを未然に防ぎ、早期離職を劇的に減らすことができるからです。

例えば、現場を巻き込んで「活躍する人物像」を定義できれば、スキル面だけでなく、企業文化への適合度や価値観の相性まで深く見極められるようになります。

これにより、「入社後の活躍可能性が高い人材」をピンポイントで採用することが可能に。

また、入社後のオンボーディングまでをプロセスに組み込むことで、3ヶ月定着率や半年後の評価スコアといった指標が向上し、「採用成功=入社後活躍」という理想形に近づきます。

採用プロセス改善は、単に“人を採る”ことではありません。“長く活躍し続ける人材”を確保し、最終的には組織全体の生産性を押し上げるための、最も確実な投資なのです。

採用担当者の負担軽減と戦略業務への集中

多くの現場では、優秀な人事担当者の時間が「日程調整」「進捗管理」「資料作成」といった、いわゆる「ノンコア業務(定型作業)」に忙殺されています。

プロセス改善やDX化(ATS・自動化ツールの導入)を進める最大の意義は、これらの単純作業から担当者を解放し、「人にしかできない付加価値の高い業務(コア業務)」にリソースを集中させること。

例えば、生まれた時間を「採用データの分析による課題特定」「採用戦略の企画・立案」「面接官トレーニング」「候補者体験(CX)の向上」といった、クリエイティブな施策に充てることができるように。

これにより、採用チーム全体の生産性が飛躍的に向上し、組織としての「採用力」そのものが強化されます。

また、過度な事務負担を減らすことは、担当者の疲弊を防ぎ、属人化の解消や離職防止にもつながるため、組織の持続可能性という観点でも大きな価値があります。

採用プロセス改善は、担当者の“時間の質”を高め、「事務処理係」から「戦略人事」へと進化するための重要な基盤となるのです。

採用プロセス改善が採用成功の鍵

採用プロセスの改善は、目の前の採用課題を解消するだけではありません。

属人化の解消や生産性の向上、そして優秀な人材の定着を通じて、企業の経営基盤そのものを強化する大きなインパクトを持っています。

もちろん、一朝一夕ですべてを変えることは難しいかもしれません。

まずは現状のプロセスを可視化してボトルネックを特定し、小さな改善施策(PDCA)を積み重ねることから始めてみてください。

そして最も重要なのは、採用を人事だけの責任にしないこと。

現場や経営層を巻き込み、全社一丸となって「採用力」を高めていくことこそが、激化する採用市場で勝ち抜き、未来の仲間を獲得する唯一の鍵となるでしょう。

WRITERライター情報

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執筆者

金田大和

株式会社b&q 執行役員

横浜国立大学卒。プロップテック企業にて、リテンションマーケティング事業や人事コンサルティング事業の立ち上げ、事業責任者として推進。その後、代表高稲とb&qを共同創業し、現在は執行役員として、多くの企業にHRを通じて本質的な価値を届けるべく、コンサルティング事業を含む複数のHR事業を管掌。これまでのキャリアを通じて合計500社以上の人事と対話し採用/組織改善を図る。