公開日:2026.07.12
人的資本経営における採用とは?従来採用との違いや採用戦略への落とし込み方を解説
求人を出しても、事業の核となる人材がなかなか採用できない……。
目標の採用数は達成しているのに、入社後の早期離職が止まらずに困っている……。
――成功の鍵は、経営戦略から入社後の定着・活躍までを一体で設計することにあります。
本記事では、人材を「コスト」ではなく「資本」と捉える人的資本経営の基本概念を整理。
経営戦略の実現と将来の企業価値向上を担う、採用活動の新しい位置づけを解説します。
人事・採用担当者はもちろん、責任者・経営層の方も、ぜひ最後までご覧ください。
この記事の要点まとめ
人的資本経営における採用とは、人材を企業価値を高める資本として捉える採用です。
経営戦略から必要な人材を逆算し、入社後の定着・活躍まで設計します。
人的資本経営における採用の要点は、以下のとおりです。
- 採用や育成を、コストではなく将来への投資として捉える
- 採用は、経営戦略を実現するための人材投資の入口である
- 入社後の定着率や活躍度まで含めて、採用成果を判断する
- 採用戦略は、経営戦略から必要な人材像を整理することから始める
- 採用要件は、スキルだけでなく価値観や成長可能性も含めて設計する
- 求職者には、働き方・育成・評価制度・組織文化などを具体的に開示する
- 採用広報では、過度な魅力づけを避け、等身大の情報を発信する
- 採用KPIは、応募数だけでなく定着率や配属先評価まで追う
人的資本経営を採用に取り入れるには、採用から定着までを一体で見直すことが重要です。
目次
人的資本経営とは?
人的資本経営とは、従業員をコストではなく、企業価値を高める資本として捉える経営の考え方です。
採用や育成にかかる費用も、単なる支出ではありません。
将来の成長や競争力を生み出すための投資として扱います。
そのため、人材の獲得・育成・配置・定着を経営戦略と連動させることが重要です。
目先の人件費や採用コストだけで判断せず、人材の価値を高める視点を組織全体で持ちましょう。
人的資本経営と採用の関係
人的資本経営における採用は、単なる欠員補充ではなく、経営戦略を実現するための人材投資の入口です。
どれだけ優れた戦略があっても、それを実行できる人材がいなければ成果にはつながりません。
そのため採用では、現在の欠員だけでなく、将来の事業成長に必要なスキルや価値観から逆算することが重要です。
内定を出して終わりではなく、入社後の育成・配置・定着まで一貫して設計する視点を持ちましょう。
従来の採用と人的資本経営を意識した採用の違い
従来の採用と人的資本経営を意識した採用の違いは、採用の目的を「人員確保」で見るか、
経営戦略の実現に向けた投資として見るかです。
従来の採用では、採用人数や採用単価などの短期的な指標が重視されがちでした。
一方で人的資本経営では、入社後の定着や活躍まで含めて成果を判断します。
| 比較項目 | 従来の採用 | 人的資本経営を意識した採用 |
|---|---|---|
| 採用目的 | 欠員補充・直近の人員確保 | 経営戦略の実現・将来への投資 |
| 人材要件 | 現時点の経験・スキル | 成長可能性・カルチャーマッチ |
| 評価基準 | 過去の実績・現場の主観 | 理念への共感・学習意欲・再現性 |
| 主なKPI | 採用人数・採用単価・内定承諾率 | 定着率・配属先での活躍度・エンゲージメント |
そのため、人事は入社時点で役割を終えるのではなく、
入社3ヶ月〜1年後の定着率やパフォーマンスまで確認する必要があります。
採用数だけを追うのではなく、入社後の活躍と定着まで評価する仕組みへと採用基準を見直しましょう。

人的資本経営において採用が重要な理由
人的資本経営が広がるなか、採用の重要性は人材不足や価値観の多様化など複数の要因で高まっています。
ここでは、人材獲得競争やミスマッチ、情報開示、企業価値との関係から理由を整理します。
まずは採用が経営に与える影響を把握し、自社の採用戦略を見直すきっかけにしましょう。
人材獲得競争が激化しているため
人材獲得競争が高まるなか、採用では候補者に選ばれる視点が重要です。
労働人口の減少や専門人材の不足により、条件を提示するだけでは応募につながりにくくなっています。
育成制度や柔軟な働き方など、人材への投資姿勢を採用サイトや求人票で具体的に示すことが有効です。
自社の魅力を可視化し、成長できる環境として伝える採用活動へ見直しましょう。
内定辞退や採用ミスマッチが増えているため
内定辞退や採用ミスマッチを防ぐには、選考段階での情報開示と期待値調整が重要です。
人材要件や入社後の役割が曖昧なままだと、候補者は入社判断に不安を持ちやすくなります。
面接では、良い面だけでなく、組織課題や任せたいミッションも具体的に伝える必要があります。
相互理解を深め、入社後のギャップを減らす選考設計を意識しましょう。
人的資本情報の開示が企業選びに影響するため
人的資本情報の開示は、候補者の企業選びに大きく影響します。
求職者は給与や仕事内容だけでなく、働き方・育成・評価制度・キャリア支援も確認しています。
情報が不足していると、入社後の成長や働き方を具体的にイメージできず、候補から外される可能性があります。
候補者が知りたい情報を先回りして示し、安心して選べる採用情報を整えましょう。
採用が企業価値向上の入口になるため
採用は、事業成長や組織力の強化につながる企業価値向上の入口です。
採用した人材のスキルや価値観が合わなければ、育成や配置に時間がかかり、成果も出にくくなります。
そのため、採用時点で任せる役割や入社後の活躍イメージを明確にしておくことが重要です。
採用を人事だけの業務にせず、経営戦略と連動した取り組みとして設計しましょう。

人的資本経営を採用戦略に落とし込む5つのステップ
人的資本経営を採用に活かすには、理念だけでなく採用プロセスへの具体化が欠かせません。
ここでは、経営戦略から採用KPIまでを5つの手順で整理します。
経営戦略・事業戦略から必要な人材を整理する
採用戦略は、まず経営戦略・事業戦略から必要な人材を整理することから始めます。
必要な職種やスキルは、事業の目標や成長方針によって変わるためです。
たとえば新規事業を進めるなら、企画力や変化対応力を持つ人材が必要になるでしょう。
経営層・現場・人事で目線を合わせ、事業目標に直結する人材像を言語化しましょう。
現在の人材構成と不足人材を可視化する
理想の人材像を定めたら、次に現在の人材構成と不足人材を可視化することが重要です。
現状を把握しないまま採用を進めると、本当に不足している職種やスキルを見誤る可能性があります。
職種、スキル、年齢構成、マネジメント候補の有無などを整理し、将来必要な組織像との差分を確認します。
不足領域を採用・育成・配置転換のどれで補うか判断し、精度の高い採用計画につなげましょう。
人材ポートフォリオをもとに採用方針を決める
不足人材への対応は、人材ポートフォリオをもとに採用方針を決めることが重要です。
すべてを外部採用で補おうとすると、採用コストやミスマッチのリスクが高まります。
不足領域ごとに、採用・育成・配置転換のどれで補うべきかを整理しましょう。
採用人数だけでなく、配属先や任せる役割まで決めることで、戦略的な採用につながります。
採用要件・評価基準を再定義する
採用要件と評価基準は、スキル・価値観・成長可能性を分けて再定義することが重要です。
基準が曖昧なままだと、面接官ごとの主観で評価がぶれ、採用ミスマッチにつながります。
必須条件、歓迎条件、入社後に育成できる条件を分けると、見極めるべき項目が明確になります。
評価の目線をそろえ、再現性のある選考基準を整えましょう。
入社後の定着・活躍までKPIで追う
採用KPIは、応募数や内定承諾率だけでなく、入社後の定着・活躍まで追うことが重要です。
採用は入社で終わりではなく、人材が企業価値に貢献して初めて成果といえます。
早期離職率、配属先での評価、エンゲージメントなどを定期的に確認しましょう。
取得したデータを採用要件や選考改善に戻し、長期的に成果が出る採用活動へつなげることが大切です。

人的資本経営を実現する採用活動のポイント
人的資本経営を採用で実現するには、要件設計や選考体験など複数の見直しが必要です。
ここでは、採用活動に落とし込む際の実践ポイントを整理します。
人材要件を経営戦略と紐づける
人材要件は、経営戦略・事業戦略の実現に必要な役割から定義することが重要です。
現場要望だけで条件を決めると、必要以上に要件が高くなり、採用難易度が上がる場合があります。
求人票を作る際は、そのスキルがどの事業目標に必要なのかを確認しましょう。
目先の欠員補充にとどめず、中長期の成果につながる人材要件へ見直すことが大切です。
カルチャーフィットを採用基準に取り入れる
カルチャーフィットは、スキルとは別の採用基準として取り入れることが重要です。
専門性が高くても、自社の価値観や働き方に合わなければ、定着や活躍につながりにくくなります。
面接では、バリューに近い行動経験や意思決定の傾向を確認するとよいでしょう。
スキルの高さだけで判断せず、自社で長く活躍できるかを見極めることが大切です。
多様な人材を採用できる体制を整える
多様な人材を採用するには、受け入れ側の体制整備まで同時に進めることが重要です。
経験や価値観、働き方が異なる人材を採用しても、評価や勤務制度が合わなければ定着しにくくなります。
成果や役割で評価する仕組み、時短勤務やリモートワークを支える環境を整えましょう。
多様な人材が力を発揮できる状態をつくり、変化に強い組織基盤へつなげることが大切です。
候補者との対話を重視する
選考では、企業が一方的に見極めるのではなく、候補者との対話を重視することが重要です。
候補者は仕事内容だけでなく、自分の不安やキャリア観を受け止めてもらえるかも見ています。
面接では、期待する役割や評価基準、組織課題を率直に伝えることが有効です。
候補者の希望や不安も確認し、相互理解を深める選考へ見直しましょう。
オンボーディングまで見据えて採用を設計する
採用は、オンボーディングまで見据えて設計することが重要です。
入社後の受け入れが現場任せになると、期待値のズレや早期離職につながる場合があります。
採用前から研修内容、初期ミッション、面談のタイミングを現場と人事で共有しましょう。
入り口から育成までを一貫させ、入社後に活躍しやすい状態をつくることが大切です。

求職者に開示すべき人的資本情報
求職者は条件面だけでなく、成長環境や働き方など複数の情報から企業を判断します。
ここでは、採用活動で開示すべき人的資本情報を項目別に整理します。
働き方に関する情報
働き方に関する情報は、求職者が入社後の生活を具体的に判断する材料です。
勤務時間、残業、休暇、リモートワーク、フレックスタイム制などが該当します。
制度の有無だけでなく、月平均残業時間や有給取得率などの実績も示すと安心感につながります。
実態に沿った情報開示を行い、入社後のギャップを減らしましょう。
育成・キャリア支援に関する情報
育成・キャリア支援に関する情報は、求職者が入社後の成長を判断する材料です。
研修、OJT、資格取得支援、キャリア面談などがあると、成長環境を具体的に伝えられます。
社員の昇格事例やキャリアの広がりを紹介すると、入社後の姿をイメージしやすくなります。
成長機会が見える情報を開示し、応募意欲の向上につなげましょう。
評価・報酬に関する情報
評価・報酬に関する情報は、求職者が入社後の納得感を判断する材料です。
評価基準や昇給・昇格の仕組みが曖昧だと、入社後の不満につながりやすくなります。
評価項目、評価頻度、報酬への反映方法を具体的に伝えると安心感が高まります。
何を頑張れば評価されるかを明確にし、評価の不透明さを減らしましょう。
組織文化・カルチャーに関する情報
組織文化・カルチャーの情報は、候補者が自分に合う職場かを判断する材料です。
価値観や意思決定の進め方が合わないと、スキルが合っていても定着しにくくなります。
「アットホーム」などの抽象表現ではなく、会議の進め方や呼び方など日常の行動で伝えましょう。
自社らしい働き方や価値観を具体的に示し、ミスマッチを防ぐことが大切です。
多様性・D&Iに関する情報
多様性・D&Iに関する情報は、候補者が長く働ける環境かを判断する材料です。
女性管理職比率、育児・介護休業の取得実績、柔軟な働き方などが該当します。
制度の有無だけでなく、実際の活用状況を示すと、働き続けるイメージを持ちやすくなります。
多様な人材が活躍できる環境を伝え、安心して応募できる状態を整えましょう。
定着支援・オンボーディングに関する情報
定着支援・オンボーディングの情報は、求職者の入社後の不安を減らす材料です。
メンター制度、1on1、入社後研修が見えると、新しい環境に馴染む流れを想像しやすくなります。
特に中途採用では、入社直後の支援体制が見えないと内定承諾を迷う要因になります。
受け入れ体制を具体的に示し、早期離職を防ぐ採用情報に整えましょう。

人的資本経営を採用広報・採用ブランディングに活かす方法
人的資本経営の取り組みは、発信方法によって候補者への伝わり方が変わるでしょう。
ここでは、採用広報・採用ブランディングへの活かし方を整理します。
人的資本への取り組みを採用サイトや求人票で発信する
人的資本への取り組みは、採用サイトや求人票で具体的に発信することが重要です。
育成体制や働き方、評価制度が伝わらないと、人材を大切にする姿勢も届きにくくなります。
求人票では給与条件だけでなく、入社後の成長機会や働き方も盛り込みましょう。
人材への投資姿勢を見える化し、候補者が企業理解を深められる導線を整えることが大切です。
社員インタビューや入社後の活躍事例を発信する
社員インタビューや活躍事例は、人的資本経営の実態を伝える有効な情報です。
制度の説明だけでは、職場の雰囲気や成長支援のリアリティは伝わりにくくなります。
入社理由、成長過程、1日の流れ、壁を乗り越えた経験などを社員の言葉で紹介しましょう。
社員の生の声を届けることで、候補者の理解と応募意欲を高めることが大切です。
候補者が入社後をイメージできる情報を届ける
候補者には、入社後の働く姿を具体的にイメージできる情報を届けることが重要です。
仕事内容やチーム体制、1日の流れが見えないと、不安から選考辞退につながる場合があります。
採用サイト、面接、スカウト文面で伝える内容に一貫性を持たせましょう。
情報不足による不安を減らし、候補者が納得して選べる状態を整えることが大切です。
実態と異なる過度な魅力づけを避ける
採用広報では、実態と異なる過度な魅力づけを避けることが重要です。
良い面だけを強調すると、入社後のギャップが大きくなり、早期離職につながる場合があります。
組織の課題も必要に応じて伝え、候補者が現実的に判断できる情報を届けましょう。
等身大の情報発信を行い、ミスマッチの少ない採用につなげることが大切です。

人的資本経営と採用に関するよくある質問
人的資本経営を採用に取り入れる際は、始め方や指標設計で迷うことも少なくありません。
ここでは、実務でよくある疑問をQ&A形式で整理します。
人的資本経営を採用に取り入れるには何から始めればよいですか?
人的資本経営を採用に取り入れるには、まず必要な人材像の言語化から始めましょう。
経営戦略や事業戦略が曖昧なままでは、採用要件や評価基準もぶれやすくなります。
次に、既存の採用要件・評価基準・選考フローを見直し、課題を整理します。
経営層と人事で目線を合わせ、戦略に沿った採用基準を整えることが重要です。
人的資本経営における採用KPIには何がありますか?
人的資本経営における採用KPIは、入社後の定着・活躍まで含めて設計することが重要です。
応募数や採用数だけでは、人材投資の成果を十分に判断できません。
主なKPIには、以下のような指標があります。
- 入社後の定着率
- 早期離職率
- 配属先での評価
- エンゲージメントスコア
- オンボーディング完了率
数値を集計するだけでなく、離職や活躍の要因を分析し、次の採用改善に活かすことが大切です。
人的資本経営を採用に取り入れ、候補者から選ばれる企業を目指そう
人的資本経営における採用とは、人材を企業価値を高める資本として捉える採用です。
採用数を満たすだけでなく、入社後の定着・活躍まで設計することが重要です。
そのためには、経営戦略から必要な人材像を逆算し、採用要件や評価基準を見直す必要があります。
また、求職者には働き方や育成、評価、組織文化などの情報を具体的に開示することが大切です。
採用広報では実態と異なる過度な魅力づけを避け、等身大の情報を発信しましょう。
人的資本経営を採用に取り入れるには、採用から定着までを一体で見直す視点が欠かせません。