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コラム
採用戦略

公開日:2026.02.23

採用戦略とは?立て方・フレームワーク・成功事例・失敗例とポイントを解説

採用戦略とは?立て方・フレームワーク・成功事例・失敗例とポイントを解説

採用戦略とは、事業目標の達成に必要な人材を確保するための方針です。

求める人材像や採用手法、選考方法などを具体的に定めます。

求人を出しても、求める人材からの応募が集まらない……。

採用にコストをかけても、採用や定着につながらない……。

――こうした課題を解決するには、採用人数を決めるだけでは不十分です。

事業計画をもとに必要な人材を整理し、ターゲットや手法、KPIまで設計する必要があります。

本記事では、採用戦略の意味や採用計画との違い、重要視される背景、立案するメリットを解説します。

さらに、立案前の準備や具体的な立て方、フレームワーク、実行・改善方法、成功事例・失敗例も紹介します。

人事・採用担当者はもちろん、責任者・経営層の方も、ぜひ最後までご覧ください。

この記事の要点まとめ

採用戦略とは、事業目標から必要な人材と採用方法を定める方針です。

採用計画より上位の考え方です。

採用戦略の要点は、以下のとおりです。

  • 事業計画をもとに、必要な職種・人数・時期を整理します。
  • 採用ターゲットを明確にし、必須条件や評価基準をそろえます。
  • 自社の魅力を整理し、候補者に合う訴求内容を設計します。
  • 採用手法は、ターゲットや予算に応じて選びます。
  • KPIは採用目標から逆算し、応募数や通過率などを設定します。
  • 3C分析やSWOT分析などは、採用課題に応じて使い分けます。
  • 経営層・人事・現場で、採用方針や評価基準を共有します。
  • 採用結果を確認し、事業や市場の変化に合わせて改善します。

必要な人材を明確にし、採用施策を一貫して設計・改善することが重要です。

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採用戦略とは

採用戦略とは、事業目標の達成に必要な人材を、計画的に確保するための方針です。

採用人数だけでなく、人材像や採用方法まで設計します。

事業の成長段階によって、必要な職種・スキル・経験は変わります。

そのため、事業戦略や人事戦略と採用活動を連動させることが欠かせません。

採用戦略では、主に以下の項目を整理します。

  • どのような人材が必要か
  • いつまでに何名採用するか
  • どの採用手法を使うか
  • どのような基準で選考するか

「誰を・なぜ・どのように採用するか」を一貫させることが、採用戦略の役割です。

採用計画との違いや経営戦略との関係もあわせて理解すると、全体像を捉えやすくなります。

採用戦略の目的と採用計画との違い

採用戦略と採用計画は、役割が異なります。

採用戦略は採用の方向性を定め、採用計画はその方針を具体的な行動へ落とし込むものです。

両者を分けて考えることで、採用人数や媒体選定だけが先行するのを防げます。

事業上の目的と採用活動を結びつけやすくなる点もメリットです。

比較項目採用戦略採用計画
目的採用の方向性・方針を定める戦略を実行する方法を具体化する
時間軸中長期を中心に設計採用期・ポジションごとに設計
主な内容採用目的・人材要件・ターゲット・チャネル方針採用人数・時期・予算・担当・スケジュール
関係者経営・人事・現場で連携人事・採用担当を中心に運用

例えば、戦略で「新規事業を担う即戦力人材を採用する」と決めたら、
計画では必要人数や採用期限、予算などを設定します。

戦略を先に定め、計画へ落とし込む流れが、採用活動の判断軸をそろえるポイントです。

経営戦略・人事戦略・採用マーケティングとの関係

採用戦略は、経営戦略や人事戦略をもとに設計し、具体的な採用施策へつなげる役割を持ちます。

採用だけを切り離して考えると、事業に必要な人材とのずれが生じやすくなります。

それぞれの関係は、以下のように整理できます。

項目役割主な内容
経営戦略事業の方向性を定める事業計画・市場拡大・新規事業など
人事戦略組織・人材活用の方針を定める採用・育成・配置・評価など
採用戦略必要な人材の確保方法を設計する人材要件・ターゲット・採用手法・選考方針
採用マーケティング候補者との接点をつくる求人広告・SNS・採用サイト・スカウトなど

例えば、新規事業を始める場合は、経営戦略をもとに必要な組織や人材を整理します。

そのうえで採用ターゲットを決め、適した媒体や訴求方法へ落とし込みます。

「事業で何を実現したいか」から採用施策まで一貫させることで、
必要な人材と採用活動のずれを抑えやすくなります。

採用戦略の立案から実行・改善までの全体像

採用戦略は、立案して終わりではありません。

実行結果を確認し、課題に応じて見直すことまで含めて運用する必要があります。

採用市場や候補者の動き、事業計画は変化します。

そのため、当初の方針が現在の状況に合っているかを定期的に確認することが大切です。

立案から改善までの基本的な流れは、以下のとおりです。

流れ主な内容
現状を把握する応募数・辞退率・早期離職などを確認する
必要な人材を明確にする職種・スキル・経験・価値観などを整理する
採用手法を選ぶ求人広告・人材紹介・スカウトなどを選定する
選考方法を決める評価基準・面接方法・適性検査などを設定する
実行・検証する応募数・通過率・内定承諾率・定着率などを確認する
改善する結果をもとに採用手法や選考方法を見直す

立案・実行・検証・改善を繰り返すことで、採用戦略を自社の事業や採用市場に合った形へ更新していけます。

採用戦略が重要視されている背景

採用戦略が重視される背景には、人材不足や働き方の変化など複数の要因があります。

ここでは、人材市場・候補者の価値観・人的資本経営の3つの視点から整理します。

背景を押さえることで、自社がなぜ採用戦略を見直すべきか判断しやすくなるでしょう。

人材不足が続き、採用競争が起こりやすい

人材不足が続くなか、必要な人材を確保しにくい状況は多くの企業で続いています

ただし、採用競争の度合いは職種や地域によって異なります。

厚生労働省によると、2025年平均の有効求人倍率は1.22倍でした。

前年の1.25倍からは低下したものの、求人が求職を上回る状況です。

候補者が複数企業を比較する状況では、求人を掲載するだけで必要な人材を確保できるとは限りません。

採用したい層に合わせた訴求や接点づくりが求められます。

そのため、採用ターゲットや訴求内容、アプローチ方法を事前に設計することが、
限られた候補者との接点を採用につなげるポイントです。

候補者が企業選びで重視するポイントは多様である

候補者が企業選びで重視する条件が一様ではないことも、採用戦略が重視される背景です。

候補者によって企業選びで重視するポイントは異なります。

ワンキャリアの「2026年卒 就活実態調査」では、
志望企業を決める際に最も重視する項目は「ワークライフバランスが確保できる」で16.0%でした。

「なりたい職種であること」は10.1%、「自分の成長」と「企業内の雰囲気の良さ」は各9.9%です。

新卒採用でも、重視される条件が一つに偏っていないことが分かります。

そのため、採用ターゲットが重視する条件を把握し、訴求内容を調整することが大切です。

候補者との認識のずれを減らし、応募や入社後のミスマッチ防止にもつながります。

人的資本経営を重視する企業が多い

人的資本経営が重視されるなか、採用も事業成長に向けた人材投資の一部として捉える視点が重要になっています。

人的資本経営とは、人材を「資本」と捉え、
その価値を引き出して中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方です。

HR総研の2025年調査では、人的資本経営を重視する企業は68%でした。

また、取り組む目的として「採用力の強化」を挙げた企業も46%に上ります。

そのため、採用でも欠員を埋めるだけでなく、事業に必要な人材を見極める視点が求められます。

採用を経営戦略と結びつけて考えることがポイントです。

採用戦略を立案するメリット

採用戦略を立てることで、採用の質や効率を見直しやすくなります。

ここでは、ミスマッチ・コスト・応募者の量と質という3つの観点からメリットを整理します。

全体像を押さえることで、自社が採用戦略を整えるべき理由を判断しやすくなるでしょう。

採用ミスマッチや早期離職を防ぎやすくなる

採用戦略を立てることで、採用要件と選考基準をそろえ、ミスマッチを減らしやすくなります

入社後の早期離職を防ぐ土台にもなります。

基準が曖昧なままでは、面接官の印象や経験則に判断が偏りやすくなります。

その結果、業務や働き方との相性を十分に確認できない場合があります。

選考では、主に以下の項目を確認します。

確認項目見るポイント
スキル・経験業務に必要な能力を満たしているか
価値観・志向仕事に求めるものと自社の環境に大きなズレがないか
働き方との相性勤務条件や仕事の進め方を受け入れられるか

人事・現場・経営層で「どのような人材を採用するか」を共有しておくことで、評価のばらつきを抑えられます。

候補者との相互理解を深めることが、入社後のギャップ軽減につながります。

採用コストと採用工数を最適化しやすくなる

採用戦略を立てると、成果につながっている採用手法へ予算や工数を配分しやすくなります

限られたリソースを有効に使ううえで重要な考え方です。

採用チャネルを増やすだけでは、応募数が増えても採用要件に合う人材が集まるとは限りません。

選考工数や採用単価が膨らむ可能性もあります。

採用手法ごとに、以下の項目を確認すると比較しやすくなります。

確認項目確認する内容
応募数どの手法から何人応募したか
採用数実際に何人採用できたか
採用コスト1人の採用にどの程度の費用がかかったか
選考工数書類選考や面接にどの程度の時間を使ったか
定着状況入社後も継続して活躍・在籍しているか

応募数だけでなく、採用数・コスト・工数・定着まで含めて比較することがポイントです。

結果をもとに優先順位を見直せば、採用活動全体の効率化につながります。

求める人材からの応募を増やしやすくなる

採用戦略を整えると、自社が求める人材からの応募を増やしやすくなります

応募数だけでなく、採用要件に合う人材を集める視点が重要です。

候補者が重視する情報は、職種や経験によって異なります。

すべての層に同じ内容を伝えるだけでは、自社の魅力が十分に伝わらない場合があります。

ターゲットに応じて、訴求内容を調整すると効果的です。

ターゲット例訴求する内容の例
若手人材成長環境・研修・キャリア形成
専門職業務内容・技術環境・専門性を高める機会
管理職候補裁量範囲・組織課題・期待する役割

「誰に、どの魅力を伝えるか」を明確にすることで、応募者の量と質の両方を改善しやすくなります。

結果として、事業成長に必要な人材の確保にもつながります。

採用戦略を立てる前に行う準備

採用戦略を立てる前には、事業計画や採用課題、使えるリソースを整理しておく必要があります。

ここでは、要員計画・採用データ・社内体制の3つの視点から準備事項を確認します。

事前に前提条件をそろえておくことで、その後のターゲット設定や施策選定を進めやすくなります。

事業計画と要員計画を整理する

採用戦略を立てる前に、事業計画から必要な人材を逆算して整理することが必要です。

採用人数だけでなく、職種やスキル、採用時期まで明確にします。

感覚だけで採用人数を決めると、事業の成長に必要な人材と実際の採用内容がずれる可能性があります。

将来の事業目標と現在の人員状況を照らし合わせて考えることが大切です。

要員計画では、主に以下を確認します。

  • 事業計画上、必要となる人員数
  • 部署・職種ごとの現在の在籍数
  • 退職や異動による今後の人員変化
  • 不足分として必要になる採用人数
  • 担当業務に必要なスキルや経験
  • 配属時期から逆算した採用時期

必要な人材を量と質の両面から把握することで、その後の人材要件や採用手法も設計しやすくなります。

事業計画と要員計画を結びつけることが、採用戦略の土台です。

採用課題・KPI・採用リソースを棚卸しする

採用戦略を立てる前に、採用課題・KPI・使えるリソースをセットで棚卸しすることが必要です。

課題だけでなく、改善に使える人員や予算まで把握します。

採用課題は、選考段階ごとのKPIを見ると特定しやすくなります。

選考段階主なKPI確認したい課題
応募→書類選考書類選考通過率応募者層がターゲットとずれていないか
書類→面接面接設定率・実施率連絡や日程調整に時間がかかっていないか
面接→内定面接通過率評価基準にばらつきがないか
内定→入社内定承諾率条件や魅力を十分に伝えられているか
入社後定着率・早期離職率入社前後で認識のずれがないか

あわせて、採用担当者の人数や工数、予算、利用中の媒体・ツール、外部支援の有無も確認します。

施策を実行できる体制があるかまで見ることがポイントです。

「どこに課題があり、何を使って改善できるか」を整理することで、
その後の採用戦略に優先順位をつけやすくなります。

採用ターゲットと戦略立案の体制を明確にする

採用戦略を立てる際は、採用ターゲットと関係者の役割を事前に明確にすることが大切です。

人事だけで決めると、事業方針や現場ニーズとのずれが生じる場合があります。

まず、経営層・現場・人事で「どのような人材を採用するか」を共有します。

そのうえで、判断する範囲や責任者を決めておくと進行がスムーズです。

役割分担の目安は以下のとおりです。

  • 経営層:事業方針や採用優先ポジションを決める
  • 現場責任者:必要なスキル・経験・業務要件を整理する
  • 人事担当者:情報をまとめ、採用手法や選考フローへ落とし込む

採否の最終判断者まで決めておくことで、選考途中の基準変更や意思決定の遅れを防ぎやすくなります。

関係者の認識をそろえることが、戦略を実行しやすくする土台です。

採用戦略の立て方

採用戦略は、必要な人材や施策を個別に決めるだけでは、一貫した方針になりにくいものです。

ここでは、要員計画からKPI・実行計画まで、6つの手順に分けて立て方を整理します。

全体の流れを先に押さえることで、自社で何から決めるべきか判断しやすくなるでしょう。

STEP1.要員計画をもとに採用方針を決める

採用戦略の最初のステップは、要員計画をもとに採用方針を決めることです。

事業計画から、必要な職種・人数・時期を整理します。

採用人数だけを先に決めると、事業で必要な人材とのずれが生じる場合があります。

まず「いつまでに、どのような人材が必要か」を明確にすることが基本です。

人材の確保方法は、目的に応じて選びます。

  • 新卒採用:将来を見据えて人材を育成したい場合
  • 中途採用:経験やスキルを持つ人材が必要な場合
  • 業務委託:特定分野の専門性を一時的に確保したい場合
  • 派遣:一定期間の人員を確保したい場合

複数ポジションを採用する場合は、事業への影響や欠員状況から優先順位も決めます。

職種・人数・時期・確保方法まで整理することが、その後の採用判断をそろえる土台になります。

STEP2.求める人材像・採用基準・ペルソナを設計する

採用方針が決まったら、求める人材像を具体化し、採用基準へ落とし込むことが必要です。

曖昧な人物像のままでは、面接官ごとに評価がぶれやすくなります。

人材像を整理する際は、主に以下の項目を確認します。

  • 経験・スキル:実務経験、専門知識、資格など
  • 能力:問題解決力、コミュニケーション力など
  • 価値観・行動特性:仕事への姿勢、自社の働き方との相性など

各項目は、必須条件と歓迎条件に分けると優先順位が明確になります。

採用ペルソナでは、転職理由や仕事選びの条件、情報収集の方法まで整理すると具体性が高まります。

人事・現場・経営層で採用基準を共有することで、書類選考から面接まで判断軸をそろえやすくなります。

評価のばらつきを抑えるうえでも有効です。

STEP3.自社の強みとEVPを言語化する

求める人材に自社を選んでもらうには、自社で働く価値を言語化することが必要です。

その際に整理したいのがEVPです。

EVPとは、企業が従業員に提供できる価値を指します。

給与だけでなく、仕事内容や成長機会、働き方、組織文化なども含みます。

自社の強みは、以下の観点から整理すると分かりやすくなります。

  • 仕事内容・裁量:担当業務や任される範囲
  • 成長機会:身につくスキルやキャリアの選択肢
  • 待遇・働き方:給与、休暇、勤務形態など
  • 組織文化:チームの雰囲気や仕事の進め方
  • 事業:商品・サービスの特徴や社会への価値

STEP2で設定したペルソナと照らし合わせ、候補者が重視する魅力を具体的に伝えることがポイントです。

社員へのヒアリングや競合比較も行うと、自社ならではの訴求を整理しやすくなります。

STEP4.採用手法と採用チャネルを選定する

採用手法とチャネルは、採用ターゲットと自社のリソースに合わせて選ぶことが重要です。

費用や工数、接触できる候補者層は手法ごとに異なります。

複数の手法を比較すると、目的に合う組み合わせを判断しやすくなります。

採用手法主な特性向いているケース
求人媒体幅広い転職顕在層へ情報を届けやすい応募数を一定数確保したい場合
人材紹介成功報酬型が一般的で、候補者紹介を受けられる専門職や採用難易度の高い職種
ダイレクトリクルーティング候補者へ企業から直接アプローチできる転職潜在層にも接点を広げたい場合
リファラル採用社員を通じて候補者へ接触する自社への理解を深めたうえで応募してほしい場合
オウンドメディア・SNS継続的な情報発信で認知や理解を高める中長期で採用広報を強化したい場合

選定後は、応募数だけでなく通過率や採用単価も確認します。

成果を比較しながらチャネル構成を見直すことで、母集団の量と質を調整しやすくなります。

STEP5.採用スケジュールとKPIを設定する

採用スケジュールとKPIは、採用目標から逆算して設定することが基本です。

必要な応募数や各選考段階の目標を明確にすると、進捗を判断しやすくなります。

例えば、採用目標3名で各選考の通過率を以下のように設定した場合、必要応募数は約48件です。

3 ÷(内定承諾率 70% × 最終面接通過率 60% × 一次面接通過率 50% × 書類通過率 30%)≒ 48件

主なKPIは、以下のように設定します。

  • 応募数:採用目標と各段階の歩留まりから逆算する
  • 書類選考通過率:過去の実績や採用要件を参考にする
  • 面接通過率:職種や選考基準に合わせて設定する
  • 内定承諾率:過去実績や競合状況を踏まえる
  • 採用単価:採用予算と目標採用数から管理する

過去データがない場合は、参考値を仮置きし、実績に応じて調整します。

入社日から各工程の期限も逆算することで、KPIとスケジュールを連動させられます。

STEP6.採用施策の優先順位と実行計画を決める

最後に、採用課題への影響度と取り組みやすさをもとに、施策の優先順位を決めます

複数施策を同時に進めると、予算や工数が分散しやすいためです。

優先する施策が決まったら、以下を実行計画に落とし込みます。

  • 施策:具体的に何を行うか
  • 担当者:誰が責任を持つか
  • 期限:いつまでに実施するか
  • 予算:いくら使うか
  • KPI:どの数値で成果を判断するか

例えば、応募数が不足しているなら求人内容や採用チャネルを見直します。

内定承諾率が低い場合は、情報提供やオファー内容の改善が候補になります。

短期施策と中長期施策を分け、「誰が・いつまでに・何をするか」を明確にすることで、
採用戦略を具体的な行動へ移しやすくなります。

採用戦略の立案に役立つフレームワーク

採用戦略を立てる際は、市場・自社・候補者・採用プロセスなど複数の視点から整理する必要があります。

ここでは、3C分析やSWOT分析など、採用戦略の立案に活用できる代表的なフレームワークを紹介します。

それぞれの役割を把握することで、自社の採用課題に合った分析手法を選びやすくなるでしょう。

3C分析・SWOT分析|採用市場と自社の状況を整理する

3C分析とSWOT分析は、採用市場と自社の状況を整理する際に役立つフレームワークです。

採用施策を考える前に、外部環境と内部環境を把握できます。

3C分析では「市場・候補者」「競合」「自社」の3つの視点から確認します。

一方、SWOT分析は自社の強み・弱みと、外部環境の機会・脅威を整理する方法です。

フレームワーク主な視点採用で確認する例
3C分析市場・競合・自社候補者ニーズ、競合求人、自社の採用条件
SWOT分析強み・弱み・機会・脅威自社の魅力、採用上の課題、市場変化

例えば、競合より給与で劣っていても、裁量や成長機会が強みになる場合があります。

採用市場と自社を相対的に捉えることで、訴求内容や採用方針を決めやすくなります。

3C分析:採用市場・競合・自社の整理
SWOT分析:自社の強み・弱みを採用戦略に活用

ペルソナ分析・4C分析・TMP設計|採用ターゲットと訴求内容を設計する

ペルソナ分析・4C分析・TMP設計は、採用ターゲットと訴求内容を具体化する際に役立つフレームワークです。

それぞれ役割が異なります。

フレームワーク採用で整理する内容
ペルソナ分析採用したい人物の経験・志向・転職理由など
4C分析候補者が感じる価値・負担・利便性・コミュニケーション
TMP設計誰に・何を伝え・どの採用プロセスで届けるか

TMPは、Targeting・Messaging・Processingの3要素で採用活動を設計する考え方です。

ペルソナで人物像を定め、4Cで候補者視点の魅力を整理した内容も活用できます。

3つを組み合わせると、「誰を採用したいか」と「何をどう伝えるか」の一貫性を持たせやすくなります。

ターゲットに合わせた採用施策を設計する際に有効です。

ペルソナ分析:採用ターゲットの具体化
4C分析:求職者視点で採用訴求の設計
TMP設計:ターゲット・メッセージ・採用プロセスの整理

ファネル分析|採用プロセスの課題を特定する

ファネル分析は、採用プロセスのどの段階で候補者が減っているかを特定する方法です。

応募から入社までの歩留まりを段階ごとに確認します。

主に以下のような数値を見ます。

  • 応募数
  • 書類選考通過率
  • 面接設定率・実施率
  • 面接通過率
  • 内定承諾率
  • 入社率

例えば、応募数は多いのに書類通過率が低ければ、募集媒体やターゲット設定に課題がある可能性があります。

内定承諾率が低い場合は、条件や魅力訴求の見直しが候補になります。

数値が大きく落ちている工程から原因を掘り下げることで、
優先して改善すべき採用課題を絞り込みやすくなります。

採用ファネル:応募から入社までの歩留まりの改善

採用課題に応じたフレームワークの選び方

フレームワークは、解決したい採用課題に合わせて選ぶことが大切です。

目的に合わない分析を行っても、施策につながりにくくなります。

課題ごとの使い分けは、以下のように整理できます。

採用課題おすすめのフレームワーク
市場や競合、自社の立ち位置を把握したい3C分析・SWOT分析
採用ターゲットを具体化したいペルソナ分析
候補者視点で魅力や接点を整理したい4C分析
ターゲットと訴求、採用プロセスを一貫させたいTMP設計
選考途中の離脱ポイントを特定したいファネル分析

例えば、応募数が少ない場合でも、原因が認知不足なのか訴求の弱さなのかで使う分析は変わります。

まず課題を特定し、その原因を深掘りできる手法を選ぶことがポイントです。

「何を明らかにしたいか」から逆算して選ぶことで、分析結果を具体的な採用施策へつなげやすくなります。

採用戦略を実行・改善する方法

採用戦略は、立案するだけでなく、実行後の結果を踏まえて見直す必要があります。

ここでは、母集団形成・選考・入社後支援・KPI改善の4つの視点から進め方を整理します。

全体の流れを押さえることで、どの段階から改善すべきか判断しやすくなるでしょう。

採用広報と募集施策で母集団を形成する

母集団形成では、採用ターゲットに合った情報を、適切なチャネルで届けることが重要です。

求人を出すだけでは、求める人材に届かない場合があります。

採用広報で伝える内容と、情報を届けるチャネルを分けて考えると整理しやすくなります。

  • 求人媒体:転職顕在層に仕事内容や募集条件を伝える
  • 採用サイト:社員や働き方を紹介し、企業理解を深める
  • SNS:認知を広げ、日常的な情報を発信する
  • ダイレクトリクルーティング:条件に合う候補者へ直接アプローチする

運用後は応募数だけでなく、書類通過率や面接設定率も確認します。

求める人材との接点を増やせているかを見ることが、母集団形成を改善するポイントです。

選考フローと採用CXを設計・改善する

選考フローを候補者視点で見直すことで、選考辞退を減らし、採用CXを高めやすくなります

採用CXとは、候補者が選考を通じて得る体験や企業への印象のことです。

連絡の遅さや情報不足、必要以上に長い選考は、候補者の参加意欲を下げる要因になり得ます。

選考期間や面接回数、評価基準、情報提供の内容などを確認します。

リクルートマネジメントソリューションズの新卒採用に関する2025年調査では、
個人面接後の辞退理由で「この企業では、自分のやりたい仕事ができないと感じた」が1位でした。

面接は候補者を見極めるだけでなく、仕事や企業への理解を深めてもらう場でもあります。

候補者が納得して判断できる選考を設計することが、採用CX改善につながります。

内定者フォロー・オンボーディング・定着支援を行う

採用では、内定後から入社後まで継続して支援することが大切です。

内定辞退や早期離職の防止にもつながります。

内定後に不安や疑問が残ると、入社意思が揺らぐ場合があります。

入社後も役割や期待値が不明確だと、職場への適応に時間がかかることがあります。

時期ごとに、以下のような支援を行います。

  • 内定後:定期連絡や面談、労働条件・入社手続きの説明
  • 入社前:配属先や業務内容の共有、社員との交流
  • 入社直後:研修・OJT、役割や業務目標の共有
  • 入社後:1on1や面談による適応状況の確認

入社前後の情報や期待値のギャップを減らすことが、スムーズなオンボーディングのポイントです。

内定から定着までを一続きの採用プロセスとして捉えるとよいでしょう。

採用KPIを分析してPDCAを回す

採用KPIは、目標と実績の差がどの工程で生じたかを確認するための指標です。

数値を見るだけでなく、原因を仮説として整理することが欠かせません。

主な見方は以下のとおりです。

数値の変化考えられる原因改善施策の例
応募数が少ないチャネルや求人訴求が合っていない媒体や求人内容を見直す
書類通過率が低いターゲットと応募者層がずれている要件や媒体を見直す
面接通過率がばらつく評価基準が統一されていない評価項目や面接方法をそろえる
内定承諾率が低い条件や魅力訴求が弱いオファー内容やフォローを見直す
早期離職率が高い入社前後の認識差が大きい情報提供や受け入れ体制を見直す

改善後は、同じKPIを継続して追い、施策前後の変化を比較することがポイントです。

結果を記録して次の施策へ反映すると、自社に合う採用方法を見つけやすくなります。

採用戦略の成功事例

採用戦略の成果は、課題に応じて見直すポイントが異なるため、事例から学ぶと理解しやすくなります。

ここでは、ターゲット設計・チャネル改善・KPI分析という3つの切り口で成功事例を紹介します。

各社の改善内容を確認し、自社の採用課題に近い取り組みを見つける参考にするとよいでしょう。

採用ターゲットと訴求内容を見直し、半年で5名を採用した事例

ユースタイルラボラトリー株式会社では、採用ターゲットと訴求内容を見直し、半年間で5名の採用につなげました。

導入前は、社内にエンジニア採用のノウハウが少ない状態でした。

求める「ミドル層」の定義も曖昧で、応募者がジュニア層に偏る課題がありました。

そこで、現場の意見をもとに人材像やスカウト条件を整理。

ターゲットごとに、伝える魅力も見直しました。

主な改善内容は以下のとおりです。

  • 採用ターゲット:「ミドル層」の定義や検索条件を具体化
  • 訴求内容:自社開発や働きやすさなどの強みを整理
  • スカウト:候補者層に合わせて文面を改善
  • 採用広報:メンバー紹介記事で働く環境を可視化
  • 進捗管理:定例で数値を確認し、改善を継続

その結果、スカウト媒体のみで半年間に5名の内定承諾を獲得しました。

採用ターゲットと訴求内容をそろえ、成果につなげた事例といえます。

採用チャネルと選考体制を見直し、採用効率を改善した事例

エフシーアイジャパン株式会社では、採用チャネルと選考体制を見直し、採用効率を改善しました。

導入前は、一人で採用実務を担っていました。

求人媒体に高額な費用をかけても応募が少なく、選考対応にも負担がかかっていた状態です。

そこで、効果の薄い求人媒体から人材紹介中心の採用へ変更。

エージェント対応の窓口も集約し、求人情報や選考要件を詳しく共有しました。

主な改善内容は以下のとおりです。

  • 採用チャネル:求人媒体から人材紹介中心へ変更
  • エージェント対応:複数社との窓口を一本化
  • 情報共有:求人内容や面接要件を詳しく共有
  • 選考管理:候補者ごとの進捗を確認し、対応漏れを防止
  • 業務分担:採用担当者が面接などに集中できる体制を構築

その結果、無駄な媒体費を抑えながら、候補者紹介を得られる採用体制へ改善しました。

成果の低いチャネルを見直し、選考運用まで整えることで、採用効率を高めた事例といえます。

採用KPIを分析し、書類選考通過率を6.7%から23.5%へ改善した事例

株式会社ハイブアイキューでは、
採用KPIをもとに選考基準やエージェント運用を見直し、書類選考通過率を改善しました。

導入前は、データエンジニアなどの採用に苦戦していました。

紹介数を増やした結果、書類選考通過率が6.7%まで低下していた時期もあります。

そこで、書類選考基準を明確化し、エージェントごとに採用ターゲットを細かく共有。

定例で数値を確認しながら、紹介精度を高めていきました。

主な改善内容は以下のとおりです。

  • 採用基準:求めるスキルや経験を明確化
  • エージェント連携:候補者像や選考基準を細かく共有
  • KPI管理:書類通過率や紹介数を継続的に確認
  • 訴求内容:候補者に伝える強みやキーワードを整理
  • 改善運用:定例で課題を振り返り、施策を調整

その結果、選考基準を変えずに書類選考通過率は6.7%から23.5%へ改善

書類選考通過数も1.7倍になりました。

紹介数だけでなく、通過率まで分析しながら採用活動を改善した事例といえます。

採用戦略でよくある失敗例と成功のポイント

採用戦略は、方針や役割分担、KPI運用など複数の要因でうまく機能しない場合があります。

ここでは、よくある失敗例と、それを防ぐための成功ポイントをセットで整理します。

つまずきやすい箇所を先に把握することで、自社の採用戦略を見直す判断材料になるでしょう。

採用方針や採用ターゲットが曖昧になっている

採用方針やターゲットが曖昧なままでは、選考基準がぶれ、採用ミスマッチが起こりやすくなります。

誰を採用したいのかが明確でないと、人事と現場で評価軸がずれます。

求人票の内容や面接で確認する項目にも一貫性を持たせにくくなります。

よくある状態は以下のとおりです。

  • 求人要件が「意欲のある方」など抽象的
  • 人事と現場で候補者の評価が大きく分かれる
  • 入社後に期待していたスキルとの差が判明する
  • 採用ごとに求める人物像が変わる

募集前に、採用目的・必須条件・歓迎条件・評価項目を関係者で共有することが必要です。

求人票から選考まで判断軸をそろえることで、採用精度を高めやすくなります。

経営層・人事・現場の認識がずれている

経営層・人事・現場の認識がずれていると、選考基準や採用判断に一貫性を持たせにくくなります。

三者では、重視するポイントが異なる場合があります。例えば、以下のようなずれです。

  • 経営層:事業拡大を見据えた人材を重視する
  • 人事:採用コストや企業文化との相性を見る
  • 現場:即戦力となるスキルや経験を求める

この状態で進めると、面接ごとに評価が変わったり、内定前後で採用方針が変わったりする可能性があります。

採用開始前に、採用目的・人材要件・評価基準・役割分担を三者で共有することが必要です。

判断軸をそろえることで、意思決定も進めやすくなります。

採用チャネルの選定やKPIの運用が適切でない

採用チャネルやKPIの運用が適切でないと、応募数が増えても採用成果につながらない場合があります。

チャネルがターゲットと合っていなければ、要件に合わない応募が増えやすくなります。

応募数だけを追うと、採用の質や費用対効果も見えにくくなります。

見直す際は、以下の項目を確認します。

  • 採用チャネル:ターゲットに届いているか
  • 応募数:必要な母集団を確保できているか
  • 選考通過率:要件に合う候補者が集まっているか
  • 内定承諾率:条件や魅力が伝わっているか
  • 採用単価:費用に見合う成果が出ているか
  • 定着率:採用後も継続して在籍しているか

量・質・費用の3つの視点でKPIを見ることがポイントです。

実績をもとにチャネルと指標を見直すことで、採用活動の精度を高めやすくなります。

採用戦略を社内で共有し継続的に改善する

採用戦略は、社内で共有し、採用結果をもとに継続的に見直すことが必要です。

人事だけで管理すると、経営層や現場との認識がずれやすくなります。

また、事業計画や採用市場が変われば、必要な人材や適した採用手法も変化します。

定期的に前提条件を確認することが欠かせません。

見直す際は、以下の情報を共有します。

  • 応募数・選考通過率・内定承諾率
  • チャネルごとの採用数や費用
  • 選考辞退・内定辞退の理由
  • 入社後の定着状況や現場評価
  • 事業計画や要員計画の変更

採用結果と現場の声を次の施策へ反映する仕組みをつくることで、
採用戦略を事業や市場の変化に合わせて改善し続けられます。

採用戦略に関するよくある質問

採用戦略を考える際は、立案方法だけでなく、運用や見直しに関する疑問も生じやすいものです。

ここでは、採用計画との違いや立案体制、新卒・中途での考え方など、よくある質問を整理します。

基本的な疑問を解消しておくことで、自社に合った採用戦略を判断しやすくなるでしょう。

採用戦略と採用計画の違いは何ですか?

採用戦略は「採用の方針」、採用計画は「具体的な実行内容」です。

戦略で「なぜ・誰を・どう採るか」を決め、計画で人数や時期、予算などを具体化します。

戦略を先に決めてから計画へ落とし込むことで、採用活動の判断軸をそろえやすくなります。

採用戦略は誰が立案するべきですか?

採用戦略は、人事を中心に経営層・現場と連携して立案するのが基本です。

経営層が事業方針を示し、現場が必要な人材要件を整理します。

その内容を人事が採用戦略へ落とし込みます。

三者で判断基準をそろえることで、採用方針のずれを防ぎやすくなります。

新卒採用と中途採用で採用戦略は変わりますか?

新卒採用と中途採用では、採用戦略を分けて考える必要があります。

新卒はポテンシャルや価値観を重視し、中途は実務経験や専門スキルを重視する傾向があります。

採用時期や使うチャネルも異なります。

両方を採用する場合は、ターゲットや訴求内容、選考方法をそれぞれ設計することがポイントです。

中小企業にも採用戦略は必要ですか?

中小企業にも採用戦略は必要です。

むしろ、採用に使える予算や人員が限られる企業ほど、優先順位を明確にすることが大切です。

採用ターゲットや訴求内容、使うチャネルを絞ることで、
限られたリソースを成果につながりやすい施策へ集中できます。

自社の強みを整理し、誰に何を伝えるかを明確にすることがポイントです。

採用戦略はどのくらいの頻度で見直すべきですか?

採用戦略の見直し頻度に一律の基準はありません。

例えば、戦略全体は年1回程度、KPIは月次・四半期で確認すると運用しやすくなります。

ただし、事業計画や採用人数、市場環境が大きく変わった場合は、時期を待たずに見直す必要があります。

定期確認と随時見直しを分けて運用することがポイントです。

採用戦略を立案して成果につながる採用活動を始めよう

採用戦略とは、事業目標から逆算して、必要な人材と採用方法を定める方針です。

採用人数だけでなく、人材要件や選考基準まで一貫して設計します。

立案する際は、事業計画や要員計画を整理し、採用ターゲット・EVP・チャネル・KPIへ落とし込みます。

経営や現場との認識をそろえることも欠かせません。

採用戦略は、一度決めて終わりではありません。

応募数や通過率、内定承諾率などを確認し、課題に応じて施策を見直します。

採用結果を継続的に振り返り、事業や市場の変化に合わせて改善することが、
自社に必要な人材を確保し続ける採用体制につながります。

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執筆者

金田大和

株式会社b&q 執行役員

横浜国立大学卒。プロップテック企業にて、リテンションマーケティング事業や人事コンサルティング事業の立ち上げ、事業責任者として推進。その後、代表高稲とb&qを共同創業し、現在は執行役員として、多くの企業にHRを通じて本質的な価値を届けるべく、コンサルティング事業を含む複数のHR事業を管掌。これまでのキャリアを通じて合計500社以上の人事と対話し採用/組織改善を図る。

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