公開日:2026.08.28
【企業向け】セキュリティエンジニアの採用が難しい理由とは?原因と成功のポイントを解説
セキュリティエンジニアの求人を出しても、なかなか応募が来ない……。
内定を出しても競合他社に負け、辞退されてしまう……。
――こうした課題を解消するには、即戦力要件を見直し、業務やミッションを明確にすることが重要です。
本記事では、実務経験者の不足や高すぎる必須要件など、採用が難しい7つの理由を解説します。
さらに、求人閲覧数・応募率・辞退率から、選考のボトルネックを診断する方法も紹介します。
人事・採用担当者はもちろん、責任者・経営層の方も、ぜひ最後までご覧ください。
この記事の要点まとめ
セキュリティエンジニア採用は、人材不足や厳しい要件、待遇、選考体制などが原因で難しくなります。
採用後の定着まで見据えた設計も必要です。
セキュリティエンジニア採用の要点は、以下のとおりです。
- 「何を守り、何を任せるか」を明確にし、人物像を具体化する
- 必須条件を絞り、歓迎条件や入社後に学べる内容と分ける
- 給与だけでなく、働き方や裁量、成長環境も見直す
- 求人票では、業務内容や技術環境、ミッションを具体的に示す
- 応募数や通過率、辞退率を確認し、採用課題を特定する
- 選考では、技術力や問題解決力、説明力を分けて評価する
- 隣接職種からの育成採用も選択肢に入れる
- 入社後は、評価制度や学習支援、キャリアパスを整える
採用から定着までを一連の流れで捉え、課題のある段階から改善することが重要です。
セキュリティエンジニアの採用が難しい7つの理由
セキュリティエンジニアの採用難には、人材不足だけでなく、採用要件や待遇、選考体制などの要因が関係します。
ここでは、採用を難しくしている要因を7つに分け、自社に当てはまる課題を整理していきます。
セキュリティ人材が不足し、企業間の採用競争が激しい
セキュリティ人材は不足傾向にあり、実務経験者を採用する企業間の競争も起こりやすい状況です。
IPA(※1)の報告では、多くの日本企業がセキュリティ人材の不足を課題としているとされています。
背景には、サイバー攻撃への対応やセキュリティ体制の強化により、
幅広い企業で専門人材が必要とされていることがあります。
特に、特定領域の経験や高度なスキルを必須とすると候補者はさらに限定されます。
即戦力層だけに対象を絞りすぎないことも採用設計では欠かせません。
経験者の獲得だけを前提とせず、隣接職種や育成候補まで含めて採用対象を検討することで、
母集団を広げやすくなるでしょう。
IPA(※1):独立行政法人 情報処理推進機構
職種と専門領域が細分化され、必要な人材を定義しにくい
セキュリティ領域は担当業務が幅広く、
「セキュリティ人材」という括りだけでは必要な人物像を定義しにくい特徴があります。
IPAの「デジタルスキル標準」でも、サイバーセキュリティ領域は業務の違いに応じてロールが整理されています。
対策の導入・運用を担う人材と、方針策定・管理を担う人材では求められる役割が異なります。
さらに、SOC(セキュリティ監視・分析)での業務、CSIRTでのインシデント対応、GRC(ガバナンス・リスク管理・コンプライアンス)、プロダクトセキュリティなど、担当領域によって必要な知識や経験も変わります。
そのため、「何を守るのか」「どの業務を任せるのか」「どこまでを担当範囲とするのか」を整理し、
自社が求める役割を具体化することが採用の出発点となります。
資格・経験・技術力などの採用要件が厳しくなりやすい
セキュリティ人材の採用では、現場が求める条件をすべて必須要件にすると、
対象となる候補者が過度に限定されるおそれがあります。
たとえば、特定資格・一定年数以上の実務経験・特定領域の技術経験・
マネジメント経験などを同時に求めると、条件を満たす人材は少なくなります。
採用要件は、次の3つに分けて整理すると判断しやすくなります。
- 必須条件:入社時点で必要な経験・スキル
- 歓迎条件:保有していれば望ましい経験・スキル
- 入社後に習得可能な条件:教育や実務を通じて補えるもの
「入社時点で必要か」を条件ごとに見直すことで、求める水準を維持しながら採用対象を広げやすくなります。
給与・働き方などの条件で競合企業に負けやすい
セキュリティエンジニアは専門性が高く、給与や働き方などの条件を他社求人と比較されやすい職種です。
特に経験者採用では、年収だけでなく、リモート勤務の可否やオンコール対応、
裁量の大きさなども転職先を選ぶ判断材料になります。
競合と比較する際は、次の条件を整理すると自社の弱点を把握しやすくなります。
- 給与レンジや評価制度
- リモート勤務などの働き方
- 夜間・休日対応の有無や頻度
- 業務上の裁量や意思決定範囲
- 技術学習や資格取得への支援
給与だけで差別化する必要はありませんが、市場水準から大きく乖離していないかは確認が必要です。
自社が提供できる条件と仕事上の魅力をセットで示すことが、候補者に選ばれるためのポイントとなります。
仕事内容やセキュリティ体制の魅力が候補者に伝わりにくい
仕事内容や組織体制の情報が曖昧だと、候補者は入社後を具体的に想像できず、応募をためらいやすくなります。
特に「社内セキュリティ全般」のような表現だけでは、担当範囲や責任の大きさが分かりません。
候補者が働く姿を具体的にイメージできる情報が必要です。
求人票では、セキュリティ上問題のない範囲で、次のような情報を伝えると分かりやすくなります。
- 担当するセキュリティ領域や業務範囲
- チームの人数や他部署との連携体制
- 利用する主な技術環境やツール
- 入社後に任せる役割や裁量の範囲
すべての内部情報を公開する必要はありません。
候補者の判断に必要な情報と機密性の高い情報を切り分けて開示することが、
仕事内容の魅力を適切に伝えるポイントとなります。
技術力・対応力・適性を選考で見極めにくい
セキュリティ人材の選考では、資格や経験年数だけでは実務能力を判断しきれず、
評価基準が曖昧だと面接官ごとに判断がぶれやすくなります。
業務では技術知識に加え、インシデント発生時の判断や関係者との連携、
非技術部門への説明など複数の能力が求められるためです。
選考では、たとえば次のように評価項目を分けると整理しやすくなります。
- 技術知識:必要な技術やセキュリティへの理解
- 問題解決力:状況整理や優先順位づけの考え方
- 対応力:緊急時の判断や関係者との連携方法
- 説明力:リスクや対策を相手に合わせて伝える力
ケーススタディを使う場合は、実際のインシデント情報をそのまま出さず、
匿名化・架空化した事例を用いるのが適切です。
評価項目と判断基準をあらかじめ統一することで、選考の納得感も高めやすくなります。
入社後の評価制度やキャリアパスが整備されていない
セキュリティ人材の採用では、入社後の評価基準やキャリアパスが不透明だと、
候補者が将来像を描きにくくなります。
セキュリティ業務は、事故対応だけでなく、リスク低減や仕組み化、
社内啓発など成果が数値化しにくい領域も少なくありません。
そのため、評価軸は次のように複数の観点で設計すると整理しやすくなります。
- 技術的な改善やリスク低減への貢献
- 業務プロセスや運用体制の改善
- 社内教育や他部署との連携
- 専門性の向上や知識の共有
あわせて、スペシャリストとマネジメント双方のキャリアパスを示すことで、
候補者は入社後の成長イメージを持ちやすくなります。
セキュリティエンジニアを採用できない原因を段階別に診断する
セキュリティエンジニアを採用できない背景には、母集団形成や選考、内定後などの段階に原因が潜んでいます。
ここでは、採用プロセスを段階別に分け、候補者がどこで離脱しているかを切り口に課題を整理します。
求人の閲覧数やスカウト返信率が低い場合
求人の閲覧数やスカウト返信率が低い場合は、
「届いていない」のか「届いているが反応されない」のかを分けて考えることが必要です。
閲覧数が少なければ、掲載媒体や職種名、検索条件などでターゲットへの露出が不足している可能性があります。
一方、返信率の低さは、送付対象や訴求内容とのズレも考えられるでしょう。
確認する際は、次のように指標ごとに原因を切り分けます。
- 閲覧数:掲載チャネル、職種名、求人の露出状況
- スカウト送信数:対象となる候補者数、検索条件
- 返信率:送付対象、件名、本文、提示している仕事内容や条件
複数の数値をまとめて「母集団形成が弱い」と判断せず、
どの段階で候補者との接点が途切れているかを特定することが改善策を選ぶ基準になります。
求人は見られているが応募が集まらない場合
求人が閲覧されているのに応募が集まらない場合は、
求人内容を見た後の判断材料に不足や弱さがある可能性を考える必要があります。
給与や必須条件だけでなく、仕事内容、担当範囲、働き方、チーム体制などが曖昧だと、
候補者は自分に合う求人か判断しにくくなります。
確認するポイントは、主に次のとおりです。
- 給与や待遇が競合求人と比べて大きく見劣りしていないか
- 必須条件を厳しく設定しすぎていないか
- 仕事内容や入社後の役割を具体的に想像できるか
- リモート勤務やオンコールなど働き方が明記されているか
- 自社で働く魅力や得られる経験が伝わっているか
文章量を増やすこと自体が目的ではありません。
候補者が応募するか判断するために必要な情報が揃っているかという視点で求人票を見直すことが有効です。
応募はあるが書類選考を通過しない場合
応募は集まるものの書類通過者が少ない場合は、採用要件と応募者層のズレを疑う必要があります。
ただし、原因は要件の厳しさだけとは限りません。
求人票の訴求と実際の選考基準が一致せず、対象外の応募が増えている可能性もあります。
まずは、次の点を確認すると原因を切り分けやすくなります。
- 必須条件に本当に必要な経験だけを設定しているか
- 資格や経験年数だけで機械的に不合格にしていないか
- 求人票に記載した人物像と書類選考基準が一致しているか
- 隣接職種で活かせる経験やスキルを評価できているか
「誰を採りたいか」と「誰を通過させるか」の基準を揃えることが、
応募数を無駄にせず採用可能性を高めるポイントとなります。
面接辞退・内定辞退が多い場合
面接辞退や内定辞退が多い場合は、選考スピードや候補者への情報提供に課題がないか確認する必要があります。
連絡が遅れると他社選考が先に進みやすく、
面接で役割や裁量、評価制度などを十分に伝えられないと入社判断もしにくくなります。
確認したいポイントは、主に次のとおりです。
- 面接日程の調整や合否連絡に時間がかかっていないか
- 候補者が知りたい仕事内容や組織体制を説明できているか
- 給与や働き方、キャリアパスを適切なタイミングで伝えているか
- 候補者の転職理由や懸念点を把握できているか
面接を評価の場だけで終わらせず、候補者が自社で働く価値を判断できる場として設計することが、
辞退を減らすうえで有効です。
入社後にミスマッチや早期離職が起きる場合
入社後にミスマッチや早期離職が起きる場合は、
選考時に伝えた内容と実際の職場環境にズレがないかを確認する必要があります。
原因は仕事内容だけではありません。
責任範囲や裁量、業務負荷、評価制度、上司との関わり方など、複数の要素が影響する可能性があります。
特にセキュリティ職では、次の情報を選考段階で具体的に伝えておくことが有効です。
- 担当する業務範囲と責任
- 意思決定できる範囲
- オンコールや緊急対応の有無・頻度
- 入社後に期待する役割や評価基準
- 現在の組織課題や未整備な部分
良い面だけを伝えるのではなく、入社判断に必要な情報を事前にすり合わせておくことが、
双方の認識差を小さくするポイントです。
セキュリティエンジニアから応募される求人票と母集団形成
応募を増やすには、求人票の内容だけでなく、候補者との接点づくりも見直す必要があります。
ここでは、求人票の設計と採用チャネルの活用という2つの切り口から、母集団形成のポイントを整理します。
職種名・募集背景・入社後のミッションを具体的に記載する
セキュリティエンジニアの求人では、職種名・募集背景・入社後のミッションを具体化することが、
候補者との認識ズレを防ぐうえで有効です。
「セキュリティ担当」だけでは、担当領域や期待される役割が分かりません。
候補者が自分の経験を活かせる求人か判断できる情報が必要になります。
たとえば、次のように整理すると役割が伝わりやすくなります。
- 職種名:クラウドセキュリティエンジニア、SOCアナリストなど
- 募集背景:体制強化、新規組織の立ち上げ、事業拡大への対応など
- ミッション:クラウド環境のリスク低減、SOC体制の構築・改善など
業務を羅列するだけでなく、「なぜ採用するのか」「入社後に何を担ってほしいのか」まで示すことで、
候補者が貢献イメージを描きやすい求人になります。
業務内容・技術環境・チーム体制を開示する
セキュリティエンジニアの求人では、業務内容・技術環境・チーム体制を具体的に伝えることが、
入社後の働き方をイメージしてもらううえで有効です。
ただし、すべての内部情報を開示する必要はありません。
セキュリティ上の機密性に配慮しながら、候補者の判断に必要な情報を示します。
たとえば、次のような項目を整理すると仕事内容が伝わりやすくなります。
- 担当するセキュリティ領域や業務範囲
- 主なクラウド環境や利用技術
- チームの人数や役割分担
- 他部署との連携体制や報告ライン
- 現在抱えている課題や今後強化したい領域
公開可能な情報と機密情報を切り分けたうえで透明性を高めることが、
候補者との認識ズレを抑えるポイントとなります。
市場に合った給与と働き方・成長環境を提示する
セキュリティエンジニアの採用では、給与だけでなく、
働き方や成長環境まで含めて条件を設計することが重要です。
候補者は年収に加え、リモート勤務の可否やオンコール対応、裁量の大きさなども含めて転職先を比較します。
求人では、次のような条件を具体的に示すと判断材料が伝わりやすくなります。
- 給与レンジや評価制度
- リモート勤務などの働き方
- オンコールの有無や頻度、手当
- 資格取得や研修への支援
- 専門職・管理職などのキャリアパス
給与だけで競合との差を埋めるのが難しい場合もあります。
条件面と成長機会をセットで提示することが、自社の魅力を伝えるうえで有効です。
人材紹介・スカウト・リファラルを使い分ける
セキュリティエンジニアの母集団形成では、
採用したい人材や自社の運用体制に合わせて複数のチャネルを使い分けることが有効です。
人材紹介・ダイレクトスカウト・リファラルは、
それぞれ候補者へのアプローチ方法や企業側に必要な工数が異なります。
- 人材紹介:要件に合う候補者の紹介を受けたい場合
- ダイレクトスカウト:特定の経験を持つ人材へ直接接触したい場合
- リファラル:社員のつながりから候補者との接点をつくりたい場合
一つの手法に依存するのではなく、採用ターゲットと社内で確保できる工数を踏まえて組み合わせることが、
安定した母集団形成につながります。
技術広報と隣接職種へのアプローチで候補者層を広げる
セキュリティ人材の母集団を広げるには、技術広報による認知形成と、
隣接職種まで採用対象を広げる視点が有効です。
自社のセキュリティへの取り組みや技術課題を発信することで、
転職活動中ではない層にも企業を知ってもらう接点をつくれます。
また、次のような隣接職種では、経験領域によってセキュリティ業務に活かせる知識を持つ場合があります。
- インフラエンジニア
- ネットワークエンジニア
- クラウドエンジニア
- SRE
即戦力採用だけに限定せず、育成可能な人材まで含めて採用対象を設計することで、
中長期的に候補者層を広げやすくなります。
セキュリティ人材の能力と適性を見極める選考方法
セキュリティ人材の選考では、経験年数や資格だけでは実務能力や適性を十分に判断しにくい場面があります。
ここでは、書類・面接・ケーススタディ・評価基準の4つの切り口から、見極め方を整理します。
書類選考では経験年数より担当範囲と成果を確認する
書類選考では、経験年数だけで判断せず、候補者が担当した範囲と具体的な成果を確認することが大切です。
同じ「セキュリティ経験3年」でも、担当領域や役割、プロジェクト規模によって身につけた能力は異なります。
職務経歴書では、次の観点を確認すると実務経験を把握しやすくなります。
- どの領域やシステムを担当したか
- 本人が担った役割と責任範囲
- 発生した課題にどう対応したか
- 改善やリスク低減にどう貢献したか
資格や経験年数は判断材料の一つにとどめ、「何を経験し、どこまで自分で担ったか」まで見ることが、
候補者の能力を見極める基準になります。
面接では技術力・問題解決力・説明力を分けて評価する
面接では、技術力・問題解決力・説明力を分けて評価することで、候補者の能力を多面的に把握しやすくなります。
セキュリティ業務では、知識だけでなく、状況を整理して対応方針を決める力や、
他部署へリスクを説明する力も求められるためです。
評価項目は、たとえば次のように切り分けられます。
- 技術力:必要な技術やセキュリティ知識を理解しているか
- 問題解決力:課題を整理し、優先順位をつけて判断できるか
- 説明力:専門的な内容を相手に合わせて伝えられるか
一つの印象で総合評価を決めるのではなく、能力ごとに質問と評価基準を設定することで、
面接官による判断のばらつきを抑えやすくなります。
ケーススタディで緊急時の判断力と対応手順を確認する
面接でケーススタディを取り入れると、緊急時の判断力や対応プロセスを具体的に確認しやすくなります。
たとえば、異常検知後の初動対応を問い、候補者がどの情報を集め、何を優先し、誰と連携するかを確認します。
評価する際は、次の観点に分けると判断しやすくなります。
- 状況把握に必要な情報を整理できるか
- 対応の優先順位を合理的に説明できるか
- 関係部署や上長への連携方法を考えられるか
- 判断の根拠を言語化できるか
正解を一つに固定するのではなく、結論に至るまでの思考や判断基準を見ることがポイントです。
候補者の負担も考慮し、口頭形式など適切な方法で設計するとよいでしょう。
評価基準をスコアカード化し、選考期間を短縮する
選考を迅速に進めるには、評価項目と判断基準をスコアカード化して面接官の認識を揃えることが有効です。
評価基準が曖昧だと、面接後のすり合わせに時間がかかり、担当者によって合否判断が変わる原因にもなります。
スコアカードでは、たとえば次の項目を段階評価できるようにします。
- 技術力
- 問題解決力
- 説明力
- 志向性や役割との適合度
- 各項目を担当する面接官
一次・二次面接で確認する項目まで事前に分担すれば、重複質問も減らせます。
評価の精度を保ちながら合否判断を迅速化できる設計を目指すとよいでしょう。
内定辞退を防ぐ候補者体験とオファー設計
内定辞退には、条件面だけでなく、選考中の情報提供や候補者との認識差など複数の要因が関係します。
ここでは、候補者体験とオファー設計の観点から、入社判断を支えるコミュニケーションを整理します。
採用担当者・現場・経営層で一貫した情報を伝える
内定辞退を防ぐには、採用担当者・現場・経営層で、役割や条件などの重要情報を揃えて伝えることが大切です。
面接官ごとに仕事内容や期待役割の説明が異なると、
候補者は入社後の実態を判断しにくくなり、企業への不安にもつながります。
選考前には、少なくとも次の内容を関係者で共有しておくと認識を揃えやすくなります。
- 採用する背景と入社後のミッション
- 担当業務や責任範囲
- 組織体制や今後の方針
- 給与や働き方などの条件
- 評価基準やキャリアの選択肢
すべての面接官が同じ説明をする必要はありません。
重要事項の認識を統一し、各担当者の立場から補足する設計が、候補者の納得感を高めます。
候補者が判断できる組織課題・裁量・業務負担を開示する
内定後の認識ズレを防ぐには、組織課題や裁量、
業務負担まで含めて候補者が判断できる情報を伝えることが有効です。
良い面だけを伝えると、入社後に「聞いていた内容と違う」と感じる原因になります。
特にセキュリティ職では、負担や責任範囲の確認が欠かせません。
選考中には、次のような情報を可能な範囲で共有すると判断しやすくなります。
- 現在の組織課題や未整備な領域
- 担当者に任せる裁量と意思決定範囲
- オンコールや緊急対応の有無・頻度
- 他部署との役割分担や支援体制
ネガティブな情報を隠すのではなく、入社判断に必要な事実を誠実に伝えることが、
双方の納得感を高める土台になります。
候補者の転職理由に合わせて自社の魅力を伝える
候補者の志望度を高めるには、転職理由や意思決定軸に合わせて自社の魅力を伝えることが有効です。
求めるものは人によって異なります。専門性を深めたい人もいれば、
裁量や経営との距離、働き方を重視する人もいるでしょう。
面接では、転職で実現したいことや優先順位を確認したうえで、
自社の魅力の中から関連する要素を選んで伝えます。
一律の会社説明に終わらせず、候補者が重視する条件と自社で実現できることを結びつけることが、
納得感のある魅力訴求につながります。
オファー面談で条件・キャリア・入社への不安を確認する
オファー面談では、条件を伝えるだけでなく、候補者が入社判断に迷っている点を確認することが大切です。
給与や役割に納得していても、評価制度やキャリア、
働き方、現場の体制などに不安が残っていれば、承諾をためらう可能性があります。
面談では、次のような内容を確認すると懸念を整理しやすくなります。
- 給与や雇用条件に認識差がないか
- 入社後の役割や期待値を理解できているか
- 評価制度やキャリアパスに疑問がないか
- 働き方や現場体制で不安な点がないか
- 他社と比較するうえで迷っているポイントは何か
必要に応じて現場責任者にも参加してもらい、具体的な質問に答えられる場をつくります。
候補者が納得して意思決定できる状態を整えることが、オファー面談の役割です。
採用後の定着を支えるオンボーディングと評価制度
セキュリティエンジニアの定着には、入社直後の支援や評価方法、成長機会など複数の要素が関係します。
ここでは、オンボーディングと評価制度の観点から、入社後に活躍し続けてもらうための施策を整理します。
入社後30日・60日・90日の目標を設定する
入社後の立ち上がりを支えるには、30日・60日・90日など段階ごとに期待する状態を設定することが有効です。
最初から成果だけを求めるのではなく、事業やシステム、
関係者を理解する期間を設けることで、優先順位を明確にできます。
目標は、たとえば次のように整理できます。
- 30日:事業・システム構成・セキュリティ体制を理解する
- 60日:既存課題を把握し、改善案を整理する
- 90日:優先度の高い改善施策に着手する
期間や到達目標は役割によって調整が必要です。
目標とあわせて権限・情報・支援担当者まで用意することで、無理のない立ち上がりにつながります。
技術成果に加えて改善提案・教育・仕組み化も評価する
セキュリティエンジニアを適切に評価するには、技術的な成果だけでなく、
改善提案・教育・仕組み化への貢献も評価対象に含めることが有効です。
セキュリティ業務には、インシデント対応だけでなく、
リスクの低減や再発防止、社内のセキュリティ意識向上など、成果を単純な件数で測りにくい活動もあります。
評価項目は、たとえば次のように整理できます。
- リスク低減や脆弱性対応への貢献
- 改善施策の提案や実行
- 運用ルールや手順の仕組み化
- 社内研修やセキュリティ啓発
- 知識共有や他部署への支援
事故件数だけを評価軸にせず、本人が働きかけたプロセスや組織への貢献まで見ることで、
役割に対する納得感のある評価につながります。
継続学習を支援し、専門職としてのキャリアパスを示す
セキュリティ人材の定着には、継続的に学べる環境と
専門職として成長できるキャリアパスを整えることが有効です。
セキュリティ領域は知識の更新が求められるため、
研修や資格取得、カンファレンス参加などの支援が成長機会につながります。
あわせて、キャリアの選択肢は次のように複線化すると分かりやすくなります。
- 専門性を高めるスペシャリスト職
- 組織や人材を率いるマネジメント職
- 両者に応じた役割、評価基準、待遇
全員に管理職を求めるのではなく、専門性を高めても評価される仕組みを示すことで、
長期的なキャリアを描きやすくなります。
セキュリティエンジニアの採用に関するよくある質問
セキュリティエンジニア採用では、採用期間や育成可否、1人目に求める役割など判断に迷いやすい点があります。
ここでは、採用計画を立てる際によく生じる疑問を3つに分け、それぞれの考え方を整理します。
セキュリティエンジニアの採用にはどの程度の期間が必要ですか?
セキュリティエンジニアの採用期間には、
一律の目安はなく、採用要件や待遇、選考方法によって大きく変わります。
IPAの報告では、多くの日本企業がセキュリティ人材の不足を課題としています。
専門性を細かく限定するほど、候補者の確保に時間がかかる可能性があります。
採用開始後は、応募数・書類通過率・面接設定率・内定承諾率などを確認し、
どの段階で停滞しているかを把握します。
期間だけを基準に判断せず、採用プロセスごとの歩留まりからボトルネックを特定することが、
採用を長期化させないための基本となります。
未経験者や隣接職種の人材を採用・育成できますか?
未経験者や隣接職種からの採用・育成は可能ですが、
これまでのIT経験と任せるセキュリティ業務を踏まえて判断する必要があります。
特に、インフラ・ネットワーク・クラウド・SREなどの経験者は、
既存の知識をセキュリティ業務に活かせる場合があります。
一方、完全なIT未経験者では基礎技術からの習得が必要です。
隣接職種の経験者とは、育成期間や任せられる業務を分けて考える必要があります。
採用前には、入社後に教えられる範囲と、入社時点で必要なスキルを切り分けることが大切です。
教育担当者や研修環境も踏まえ、自社で育成可能な対象を定めるとよいでしょう。
1人目のセキュリティ担当者にはどのような能力が必要ですか?
1人目のセキュリティ担当者には、技術力に加えて、自社のリスクを整理し優先順位をつける力が求められます。
体制が未整備な段階では、課題の発見だけでなく、
経営層や開発部門と認識を揃え、対策を進める調整力も必要になるためです。
特に確認したい能力は、次のとおりです。
- 事業やシステムのリスクを整理する力
- 対策の優先順位を判断する力
- 経営層や他部署へ分かりやすく説明する力
- 外部ベンダーやツールを適切に活用する力
- 運用ルールや体制を仕組み化する力
すべてを一人で担えることよりも、社内外を巻き込みながらセキュリティ体制を構築できるかを評価することが、
1人目採用では重要な判断軸となります。
セキュリティエンジニア採用は人材探しより要件整理から始める
セキュリティエンジニアの採用難には、人材不足だけでなく、要件や待遇、選考体制など複数の要因が関係します。
採用を進める際は、「何を守るために、どの役割を任せるのか」を明確にすることが出発点です。
そこから必須条件や求人内容、採用手法を整えていきます。
さらに、選考や内定だけでなく、入社後の評価制度やキャリアパス、
オンボーディングまで一貫して設計する視点も欠かせません。
母集団形成から定着までを一連のプロセスとして捉えることで、自社の課題を特定しやすくなります。
ボトルネックから優先的に改善を進めることが採用成功への近道です。